最近、美術館に行ったり、絵画などの作品を見た経験ってありますか?
平成29年に文化庁が行った社会教育調査では、美術博物館の入館者数は
6031万人とやや増加傾向にありましたが、新型コロナの影響で
現在はなかなか美術館に行く機会が減ってしまっているかもしれません。
私自身は、割と美術館や絵画が好きな方です。
モネやルノワールなどの印象派が好きなのですが
あまりこだわらずその時にやっている企画を見るのも好きですね。
じっくりと1点1点眺めてしまうので、一緒に行った人を退屈させてしまうこともあります。
奈良に住んでいた頃は、博物館や仏像殿にも時折足を運んでいました。
そんな美術館ですが、実はストレス・抑うつ感・不安感の軽減に効果があると
されていることはご存じでしょうか?
美術館への入場券を処方?
2018年には、カナダのフランコフォリー医師会が患者さんの健康促進の一環として
モントリオール美術館と提携し、美術館への訪問を”処方”する試みが行われています。
この事例では実証実験によって、慢性的な痛みやうつ症状、ストレス不安などの緩和に
役立つことが示されているようです。
モントリオール美術館は、以前からアートセラピーに積極的な姿勢を示しており
専任のアートセラピストを含む教育・ウェルネスチームが結成されており
様々な疾患に関するプロジェクトがその他専門家と共に計画されているとなっています。
参考:世界初、治療として患者に美術館訪問を「処方」 カナダ医師会
また2021年には、ベルギーの首都ブリュッセルでも、病院と5つの公立美術館・博物館が提携し
医師が患者に”美術館や博物館への無料入場”を処方する試験的なプロジェクトが行われました。
参考:ベルギーの医師が美術館への無料入場を「処方」。コロナ禍の心のケアに
これらは、”社会的処方”と呼ばれる取り組みの1つとして語られます。
患者さんの精神的・身体的な問題を”地域とのつながり”を処方することで
解決しようとする考え方です。
社会的処方は、イギリスやオーストラリア、台湾などでも行われています。
美術作品を鑑賞することでどんな効果があるのか
ストレスホルモンの減少
美術作品を鑑賞した前後で、唾液中に含まれるコルチゾールのレベルが低下することが
いくつかの研究で示されています。
このコルチゾールはストレスホルモンと呼ばれ
ストレスを受けると分泌量が増加するとされているため
レベルが低下したことは、ストレスが緩和されたことを示すと考えられます。
抑うつ感・不安感の低下
美術作品を鑑賞した前後で、抑うつ感・不安感・心理的なストレス感などの
ネガティブな感情評価が減少することがいくつかの研究で示されています。
また、活力が上がった・気分が良くなったというポジティブな影響も
報告されています。
ほかにも
血圧・心拍数の低下、痛みの緩和、認知症患者さんへのケアなど
様々な効果が検討されています。
美術館へ足を運ぶこと
これらの効果は、出来る限り科学的に分析されていますが
お薬の効果や手術の結果などと異なり、量的な分析は完全には難しい部分も多くあります。
しかし、少なからず各国の研究から出ている結果から
美術館に足を運んで、美術作品を鑑賞することには
日常のストレスの発散や、不安感を緩和させる効果はあるように感じます。
「きれいだな」「好きだな」「怖いな」「嫌だな」「不思議だな」
同じ美術作品を鑑賞しても、人によって湧き出る感情は異なります。
その感情を味わうことも、美術鑑賞の醍醐味かと思います。
自分がどんなものにどんな風に感じるのか。そこには良いも悪いもありません。
もしご興味・お時間あるようでしたら
是非一度美術館に足を運んでみられるのも良いかもしれませんね。
<参考研究>
メナード美術館(2001). メナード美術館による実証実験
緒方泉(2021). 「博物館浴」研究の進展に向けた海外文献調査