日本のことわざの中には
「笑う門には福来る」や「病は気から」というものがあります。
ちなみに、聖書の中には
「A merry heart doeth good like a medicine.(明るい心は薬のように身体にいい)」というものがあります。
どこの国においても、昔からの生活の経験をふまえて明るく過ごすことは身体にいいとされていたようですね。
とは言っても、「そうだといいね」「そう思って生きよう」くらいのことではないかと思う方も少なくないかもしれません。
実は、笑うことや笑顔が健康に良いということが医学や心理学で研究されていることはご存じでしょうか?
笑うことの身体への影響
笑うことの健康への影響について最初に報告されたのは、1970年代のノーマン・カズンズの自分自身での実証研究です。
ここでは健康的な笑いが痛みの抑制を引き起こすことが示唆され、以降様々な方法で笑いが健康にもたらす影響について研究されてきました。
日本においては、日常生活において声を出して笑うことがほとんどない中高年者はほぼ毎日笑っていない人に比べて、理由はどうあれ死亡リスクが高いということが示されています。
笑う頻度の少ない人は高血圧・糖尿病を発症するリスクが高くなり、その結果心筋梗塞や循環器疾患が引き起こされやすいからであると考えられているようです。
また、笑い体験はNK細胞と呼ばれる自然治癒力を持った細胞を活性化させることが示されています。
これにより免疫力がアップして、がん予防の効果や健康増進が見込まれています。
笑うことの脳やこころへの影響
笑うことは脳の働きや私たちのこころにも影響します。
笑いの頻度が少ないことは物事を考えたり、判断する力である認知機能の低下と強く関連しているとされています。
認知機能の低下は認知症につながる恐れがあり、これは上記の死亡リスクとも関連する部分があるかもしれません。
また、笑うことはドーパミン・セロトニン・オキシトシンなどの快を伴うホルモンの分泌を促し、幸せな気持ちになったり、プラス思考をもたらしたりすることが示されています。
一方で、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを抑制し、ストレスによる自律神経の乱れを整えてくれると考えられます。
こころの健康に対しては笑うことで、うつ症状・不安感・睡眠の質に対しての改善がみられたことも報告されています。
これらは「楽しいものを見て・聴いて・感じて笑う」ということのみに留まらず、理由は関係なく「笑うという行動」が大切であるといわれています。
笑い声を聞いているだけでもリラクゼーションの効果がある可能性も示唆されているくらいです。
人は”楽しいから笑う”のか”笑っているから楽しい”のかということは長年議論されて続けている問題ですが、どちらにしろ効果があることが示されているため意識して笑うことを増やすことが重要であると考えられます。
笑うことの周りへの影響
ここまでは、自分だけにとっての笑顔について触れてきましたが、笑顔とは表情であり周囲の人にも影響を与えるものになります。
集団の中で1人に笑顔をさせると周囲の人の表情もほぐれて、笑顔が表出されやすくなるという現象が報告されていますが、そのシステムについてはよくわかっていません。
脳にあるミラー・ニューロンという機能が原因であるようだ、ということまでは分かっているのですが、なぜミラー・ニューロンが存在しているのかには諸説あります。
つまり、仕組みはよく分からないけれど、私たちは周囲に同調する生き物なのです。
そのため誰かが笑ったらつられて笑ってしまう、という「つられ笑い」が起こります。
先ほどからお伝えしているように、笑顔は健康に様々な影響をもたらします。
それは「笑顔という行動」が大切なので、つられ笑いも同様です。
結果、1人が笑うと、集団全体の健康度があがるということに繋がっていくのです。
まとめ
このように「笑う」ということは、心身ともにプラスの効果をもたらしてくれます。
そのため作り笑いであっても笑顔を心がけてみると良いかもしれません。
しかし、どうしても笑顔になれない時もあると思います。
ネガティブな気持ちでいっぱいになって笑えない、そんな時にはそのネガティブな気持ちを誰かに聞いてもらうことが大切です。
自分の気持ちを言葉にするのが苦手で抑えてしまいやすい人は、少しずつでいいのでいろんな気持ちを表現する練習をしてみてください。
ネガティブな気持ちを外に出してしまったら自然と笑顔が作れるときもやってくるかと思います。
自分と近い距離の人にはあまりネガティブな気持ちは言いにくいな、と感じる場合は1度カウンセリングもご利用になられてもよいかもしれません。
うまく言葉にできなくても、時間がかかってしまっても大丈夫です。
カウンセリングはあなただけのあなたのための時間ですから。
そうして少しずつ自分の周りの人にも気持ちを伝えることが出来るようになって、あなたの周りにたくさんの笑顔がうまれると良いな、と思います。