友人関係は不登校の要因の1つとしてあげられる
中学生や高校生の時期は友人関係が学校での生活に大きく影響します。
友人とうまくいっていると学校を欠席したいと思わない、ということが
示されているくらいです。
一方で、友人関係がうまくいっていないと
不安や抑うつ感につながってしまうともいわれています。
この時期は、友人と過ごす時間が家族との時間よりも多くなり
親から自立して、友人や社会集団の中に入っていくことになります。
そのため、仲間意識を得たい・親密さを感じたい、という欲求が友人へと向きます。
このことが、友人関係と学校でうまくやれるという感覚を強く結びつけることになります。
また、一見するとよい友人関係を築けているように見えたとしても
グループごとの境界が明確であったり、他の子を受け入れないような特徴があると
学校にうまくなじめない感じがしてしまうようです。
このように、友人関係がうまくいっていなかったり
友人関係に振り回されて学校でうまくやれない気持ちが増えると
不登校につながってしまうことも考えられます。
それでは、子どもたちはこの時期にどんな友人関係を築くのでしょうか。
成長するにつれて友人関係は変わっていく
小学校高学年(児童期後半)
親からの自立をはかり、友人との集団を形成し始めるこの時期を
従来の発達心理学では”ギャングエイジ”と呼んでいます。
そして、この時期に作られる仲間グループを”ギャンググループ”と呼びます。
男子集団でみられることが多いのが特徴です。
ギャンググループでは、みんなが同じ行動をすることでの一体感が重要視され
同じ遊びに加わっているものを仲間と扱います。
そのため、同じ遊びを共有できないものは仲間はずれにされてしまいます。
グループの中では役割分担がされており、仲間内にだけ分かるルールがあったりもします。
この時期には、仲間から認められることが、親から認められることよりも重要になり
親や教師などの大人がやってはいけないということをあえて仲間と一緒にやるといった
ルール破りの行動もあらわれます。
みんなで同じ行動をするという一体感から結束力を高め
大人に対する反抗、他の集団との対抗、異性集団に対する拒否感などを持つ時期です。
中学生(思春期前半)
この時期によくみられる仲良しグループを”チャムグループ”と呼びます。
女子集団でみられることが多いのが特徴です。
チャムグループでは、同じ興味・関心や部活動などを通じて関係性が結ばれます。
同じアイドルグループが好き、などの
お互いの共通点や類似点を言葉で確かめ合ったり、秘密を共有することで
仲を深めていくことになります。
小学生のギャンググループが同じ行動をすることを重視しているのに対して
チャムグループは同じ言葉を使うことを重視します。
会話の中ではその内容よりも
”私たちは同じである”ということを確認することが重視されており
時には仲間内でしか通じない言葉を使って、集団の外の人間と明確に境界線を引きます。
同じものが好きで、同じように振舞い、同じ言葉を使う
これらの一体感から、集団への絶対的な忠誠心がうまれるのがこの時期です。
高校生以降(思春期後半以降)
この時期には互いの価値観や理想・将来の生き方などを語り合う関係が生じます。
これを”ピアグループ”といいます。
ピアグループでは、これまでのように同じところ・似ているところだけではなく
お互いの違うところもぶつけ合うことによって
自分と人との違いを明らかにしていきながら、自分の中にある考えや思いを
築き上げ確認していきます。
そして、お互いが違っているということを認めて、違う部分を乗り越えると
自立している1人の人間同士として互いを尊重しながら共に過ごすことが出来るようになります。
このように、お互いが違う、ということを認めることが特徴のグループのため
これまでと違って様々な年齢、性別の混ざった集団になりやすいとされています。
ギャンググループとチャムグループにおける課題
ピアグループで異質性が認められるようになるまでの
ギャンググループとチャムグループでは同一性が絶対条件となっています。
つまり、同じグループの中にいるメンバーは絶対に同じでなければならず
その結果、メンバーには常に同じであれという圧力がかかることになるのです。
この圧力は大人が思っている以上に強いもので
大人からみれば、おかしいと感じるほど仲間と同じであろうとする
こころの動きがみられます。
だからこそ、喫煙や万引きといった反社会的な行動であっても
仲間がみんなやっているから自分もやらないといけない、というこころの動きがあり
集団の中で行われ、悪質化し、暴走してしまうことになってしまいます。
また、自分たちが”みんな同じ”であることを確認するために
短期間1人を仲間外れにするようなローテーション型のいじめが
順番に起こりやすいといわれています。
このような友人関係の中で、いろいろなトラブルを経験することは
子どもの心理的な発達において重要な過程であるとされていますが
このトラブルが子ども自身の手に負えなくなってしまっていることが
近年多くみられるようになっています。
近年みられる友人関係の変化
従来、友人関係はこれらの流れを辿って
最終的にお互いの違いを認められるピアグループを築けるようになるとされていました。
しかし、近年の子どもたちの友人関係はこれに当てはまらなくなってきています。
まず、ギャンググループは最近ではほとんどみられなくなっています。
これは小学校高学年に塾通いや習い事が増えたこと、屋外での遊び場が減ったことから
同一行動を取りづらくなっているためだと考えられています。
その結果、チャムグループの期間が前倒しされ、長くなっているとされています。
さらに、ギャンググループを経験してこなかったことで
形成されるチャムグループが表面的なものとなってしまっているようです。
実質的な同一性の持てないチャムグループは
その中だけでは絶対的な”同じである”という言葉や概念を維持できず
かといってグループを作らないわけにもいかず
”いじめ”として1人をいけにえにすることで自分たちの”同じ”を守ろうとします。
さらに、違いを認め合うピアグループの形成も先送りされてしまい
”同じであろう”とする違いを認め合うことが難しい仲間集団が
高校生や大学生まで続けられてしまうこともあるのです。
違いをみとめあうこと
ここまで見てきたように、子どものうちは
周りと同じであることが本人にとって、とても大切です。
同じでなければ仲間外れにされてしまう。
それは子どもにとってはとてもつらく、悲しいことだと思います。
また、思春期の友人関係のトラブルは自己評価の低下にもつながってしまいかねません。
保護者はそんな子どもを取り巻く環境も理解できていると
より子どもに寄り添いやすくなるかもしれません。
学校で友人関係がうまく築けなくなってしまったときには
他の場所を探すことも1つです。
子どもたちにとっては学校が世界の全てのように感じられるかもしれませんが
実は世界はもっと広く、自由なものです。
学校以外にも、居場所になる場所・友人を作れる場所はいろいろあるのですから。
なんなら無理に友人を作る必要もありません。
そうしてチャムグループの時期を抜けると
違いを認め合うピアグループの時期がやってきます。
この時には、お互いを理解しようとし、お互いを尊重しようという思いが大切です。
相手とは違った意見でも、異なった価値観でも、それを誠実に伝えてお互いに考えられるような
友人関係を築いていくことが出来るとよいですよね。
お子さんが周りとの関係で困ってしまい
不安な気持ちが大きいようでしたら
1度お気軽にご相談にきていただいてみるのもよいかと思います。