ふとした時にお腹が鳴ってしまうことは、特別なことではありません。
生きている限り、だれにでも起こることですよね。

しかし、自分のお腹の音が周りに迷惑をかけてしまっているように感じたり
お腹の音が気になってずっと緊張したまま生活することになってしまったり
どうしたら止められるのかを一日中考えていてほかのことが手につかなかったり
そんな状態になると、困ってしまいますよね。

自分のお腹の音が気になってしまって仕方がない症状は
「腹鳴恐怖症」と呼ばれるもので、悩んでいる人もたくさんいらっしゃいます。

これは大人だけにみられる症状ではなく
お腹の音が周囲に聞こえるのが嫌で学校に行けない……と
不登校につながるケースも多く見られます。

対人恐怖症の一種であり
カウンセリングによって改善の見込まれる症状です。

腹鳴恐怖症の症状

腹鳴恐怖症とは?

腹鳴恐怖症とは、自分のお腹が鳴ることで周りの人に変に思われてしまうことや
不快な思いをさせてしまうことを恐れる症状です。
胃腸神経症とも呼ばれています。

静かな場所で人と話をするときや、真面目な話をしているときなど
自分のお腹が鳴ってしまわないか、お腹の鳴る音が相手に聞こえないか不安になり、緊張してしまう。
さらに、お腹が鳴った音が相手を不快にさせていないかが気になり
同じタイミングで相手が咳払いをしたり、身体を動かしたりすると
自分のお腹がなったせいであると感じる。

多くの場合は、恥ずかしくてそこにいられなくなってしまったり
相手を不快にさせてしまった自分を責めて落ち込んだりしてしまいます。

人が多く静かな空間がつらいため、学校の授業中やテスト中、図書館などが
辛く、出来ることならば避けたいと思うことも多いようです。

お腹の鳴る音はどのくらい聞こえているのか

腹鳴恐怖症になると、自分のお腹の鳴る音が広範囲に聞こえているような感覚になります。

お腹の音が全く周りに聞こえていない、というのは嘘になってしまいます。
ただ、私の経験でいくと
聞こえたとしても周囲の数人であり、教室の端から端まで聞こえるということは
なかったように思います。
さらに、隣ならばまだしも、大抵の場合は誰からその音がしているのかは分かりません。

また、もし他者のお腹の鳴る音が聞こえたとしても多くの場合は
「お腹がすいてるんだな」と感じる程度で、特に意識をすることはないかと思います。

しかし、腹鳴恐怖症の方は
同じ空間に居る全員に自分のお腹の鳴る音が聞こえている感覚になり
もしお腹の鳴る音がしなかったとしてもお腹の動きや周りの反応を感じると
お腹がなったような気がして不安になってしまうのです。

腹鳴恐怖症の原因

お腹の音が鳴るメカニズム

腹鳴発生のメカニズムは十分に解明されているわけではありません。
しかし、腸の中にガスと液体が同時に存在し
これが蠕動(ぜんどう)という動きを伴って移動するときに発するものと考えられています。
また、お腹が空いているいる時に胃が「グー」と鳴るのは
胃の中に生じた胃液が胃粘膜を刺激して胃の運動が活発になることによって起こることが多いようです。

胃下垂などの胃の疾患を抱えている人は食べ物が胃の中に残っている時間が長くなり
胃液と食べ物が胃の中に混じっていることによって「ポチャポチャ」という音がすることもあります。

さらに、精神的な緊張が強いときには
腹部が「ゴロゴロ」「グーグー」となることもあると言われています。

過敏性腸症候群

腹鳴の原因の1つとして過敏性腸症候群が挙げられることがあります。

過敏性腸症候群とは
精神的な緊張や過度のストレスにより
脳や腸が知覚過敏となったり、腸管が運動異常を起こしたりしている状態を指します。

具体的な症状としては
腹痛、下痢、便秘、腹鳴、おなら、腹部不快感、腹部膨満感となっており
これらの症状が長期間続くこととなります。
若い女性に多いとされておりますが、男性でも成人の方でも表れることはある疾患です。

その結果、常にトイレや周りを気にして生活することで社会生活に支障が出て
生活の質が落ちてしまう。
不登校や引きこもりなどにつながることもあり
人生の方向が大きく変わってしまうことも考えられるのです。

お腹の調子が悪いのに、内科で調べても炎症などはないと言われた……
お腹の鳴る頻度が多くて気になる、ガスが溜まっているような感じがする……
といったように、気になる症状がある場合はまず胃腸科などで調べてもらうことが大切です。

また、過敏性腸症候群と診断された場合は上記のように
精神的な要素が大きく関連しているため
心療内科等に案内されることもあるかもしれません。

元々ストレスや緊張から過敏性腸症候群になったにも関わらず
その症状によってさらにストレス・緊張を感じ
いつお腹が鳴ってしまうのかという不安でさらに症状がひどくなるといった
悪循環に陥ってしまいやすくなっている方が多くいらっしゃいます。

生まれ持った性質と環境

ここまでで、腹鳴がストレスや緊張と関連することに触れてきました。
しかし、ストレスや緊張を感じている人が全員、腹鳴恐怖症になるわけではありません。

このことから、生まれ持った性質や環境とのかかわりは少なからずあると考えられます。

例えば、神経質だったり、恥ずかしがりやで目立ちたくない性格の人は
お腹の音が鳴るのが恥ずかしく、気になって仕方がなくなってしまうかもしれません。

他人の顔色を必要以上に伺い、周りにあわせようと気を遣っている人は
その結果疲れやすく、余裕がなくなってしまい
常に緊張状態におかれ、些細なことが気になってしまいます。
さらに、周りに嫌われたくない、その結果自分が傷つきたくないという思いが強くなり
お腹の音が鳴って周りに迷惑をかけてしまう、という思いにとらわれやすくなっているかもしれません。

自分の考えを持ちづらく、周りの人を基準にして生活してきた人
思春期に身につける必要がある「自分とは」がはっきりしない人は
成績が良かったり、収入が高かったりしなければ自分に価値があると思えない。
人に迷惑をかけるかもしれない、ということは
ある意味で自分が価値を持って存在しているということにもつながります。
人に影響を与えて自分の価値を証明するために
症状が継続されているという可能性もあるかもしれません。

腹鳴恐怖症の後ろには
あなたが抱えている様々な不安や悩みが隠れている可能性があります。

腹鳴恐怖症へのカウンセリング

腹鳴恐怖症の方に対して
「お腹の音を気にしないようにしましょう」と言ったところで
気になってしまうものです。
人は気にしないようにしようとするほど、その事柄が気になって仕方なくなってしまいます。

腹鳴恐怖症の人は、少なからず他者からどう見られるかを強く気にしています。
そのため、お腹の音を気にするか気にしないかではなく
他者からどう見られ、価値をつけられたとしても
「自分は自分である」「自分には価値がある」と思える感覚を養うことが重要です。

そのためには、自分を見つめなおし、本当の自分を取り戻すことが必要となります。

誰だって全員に好かれることは出来ないし、自分だって合わない人はいる。
人を責めたいときだって、甘えたいと思うときだってある。
カウンセリングで自分について話し、過去の親子関係や職場や学校で抑えてきた気持ちに
意識を向けてみることで、だんだん本当の自分が見えてきます。

それは、自分が無意識に目を背けていた部分であるため
しんどい気持ちや辛い気持ちが湧いてくるかもしれません。
そんな気持ちともバランスをとって向き合えるようにサポートします。

「周りの人はこう振舞うことを期待してる」「周りに迷惑をかける可能性があるからやらない」ではなく
「自分がやりたいからやる」「自分がやりたくないからやらない」という方向に
少しずつ重心を寄せていくことが大切です。

自分を優先できるようになると、自然と周りからどう見られているのかが前ほど気にならなくなります。
その結果、ストレスや緊張・不安が緩和され、腹鳴恐怖症も改善へと向かっていきます。

ストレスへの対処にはストレスコーピングという考え方もあります。

ストレスってなに?【ストレスコーピング①】

まとめ

「音が気になるから何もできない」のではなく
「音は気になるけど、なんとかやれそう」へと変化していけるよう。

不安や緊張と反対にある安心感についても得られるよう
あなたにあった方法を一緒に考えていきたいと思います。

症状をすぐに解決することはなかなか難しいのですが
カウンセラーと共に試行錯誤を繰り返す中で徐々に変化は表れます。

お腹がなってしまうことが気になってほかのことに集中できない
辛い日々を過ごしている方は、1度ご相談頂ければと思います。

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