無意識のうちにしてしまいがちなコミュニケーション

ダブルバインド、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
日本語に直すと、二重拘束、という意味になる心理学の用語です。

・「怒らないから理由を話して」と言われ、話したら「言い訳はいいから」と怒られた
・「なんでも聞いてね」と言われ、聞きに行ったら「そんなことも分からないの」と言われた
・「もう帰れ」と言われて、帰ろうとしたら「本当に帰る奴が居るか」と怒鳴られた
・「なんでも好きなのを選んでいい」と言われ、選んだら「こっちのほうがいいんじゃない」と変えられた
・謝罪をした際に、「いいですよ」と言われたが、しかめっ面をしていた

誰しもこのような経験があるかもしれません。
このようなコミュニケーションの取り方をダブルバインドと言います。

ダブルバインド

ダブルバインドとは<2つの矛盾したメッセージを同時に与えられて板挟みになり身動きがとれなくなってしまう状況>を指します。

上記の例でいくと、「怒らないから理由を話して」と言葉の上では肯定的なメッセージであるにも関わらず、その裏には「実際に悪いことをしていたら怒る」という別の否定的なメッセージが隠されています。
言っても言わなくても怒られるので、言われたほうはどうしたらいいのか分からなくなってしまいます。

私たちは表情や仕草・声音など非言語的なメッセージも用いながらコミュニケーションを取っています。
裏に隠れたメッセージだけではなく<言葉では肯定していても表情や声は否定している>という場合もダブルバインドになります。

ダブルバインドの表現を受け続けていると、次第に自分がどうふるまったらいいのか分からなくなってしまい、自分の考えに自信がなく自分の意見を言えなくなっていきます。
また、自分の気持ちよりも周りの顔色をうかがうことを優先し、過度に周囲に気を配りながら過ごすようになっていきます。

そのような状態が続くと、いざ自分で決断しなければいけない場面と遭遇したさいに、どうすることもできず途方に暮れることとなってしまいます。

また、ストレスのかかった状態が続いているため対人不安や不登校、うつなどこころに不調をきたしてしまうことにもつながります。

ダブルバインドから抜け出すには

”されている”側の対処法

①誰かに相談する

まずは、誰かに相談し、話を聞いてもらいましょう。
話をすることで、ふっと気持ちが軽くなることは混乱して自己否定するこころから抜け出すために大切なことです。

また、第三者から客観的に状況を見てもらえることで問題を正確な形で整理し、正常な判断力を取り戻すことも重要です。

②自分の気持ちを大切にする

ダブルバインド下にある人は、相手に応えられなかった自分が悪いという考えに囚われやすくなっています。
落ち着いて自分の気持ちを捕まえてみてください。
本当は傷ついていたり、悲しかったり、怒りを覚えていたり。
そんな気持ちが眠っているのではないでしょうか。

相手を責める気持ちに蓋をしがちですが、それらはあって当然の感情です。

そういった自分の気持ちを大切にできるような活動を少しずつ増やしていきましょう。

③相手を冷静に観察する

①、②ができると相手の行動を冷静に見つめてみる余裕ができてくると思います。

ダブルバインドを起こす人の言動や行動には矛盾やその人自身の課題が隠れているのです。
そうすると、自分の中で少し距離を置いて相手と接することができていくかもしれません。

”している”側の対処法

①強い立場にいることを自覚する

まず、自分がダブルバインドを使っている相手に対して強い立場にいることを自覚しましょう。
基本的には優位な立場にあるために、感情のままに接するとダブルバインドを生み出しやすくなってしまいます。

また、自分がダブルバインドを使っているということを自覚することも重要です。
知らず知らずのうちにダブルバインドを使い続けてしまうのではなく自覚して止めていけるようにしていきましょう。

②具体的でシンプルな伝え方を心がける

「どれでもいいよ」ではなく「この中だとどれがいい」
「なんでもきいて」ではなく「一度自分なりに15分考えてから聞きに来て」
といったように出来るだけ具体的に指示を伝えることで隠れたメッセージは少なくなります。

してほしいことは素直に「~~してほしい」「~~してはいけない」とシンプルに伝えることも大切です。

さらに、相手の意見を真っ向から否定するのではなく、相手の気持ちを受け止めたうえで自分の意見を伝える、という形でコミュニケーションを取ることで、矛盾のない風通しの良いコミュニケーションが出来ていくと思います。

③自分自身のマイナスな感情を自覚する

ダブルバインドの裏には矛盾した発言を生んでしまうマイナスの気持ちや考えが隠れています。

そこを自覚してそんな自分を受け入れることは勇気のいることですが、それによって柔軟な考え方が意識でき、より良いコミュニケーションを築いていくことが出来るのではないかと思います。

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