雑談恐怖症は、おおむねコミュニケーション能力が低いことが要因ではありません。
そのため、雑談恐怖症を解消するために話し方教室やコミュニケーションの本を読むことはあまり意味がないことも多いでしょう。
雑談以外の仕事上の決まったやり取りや必要な会話であれば問題なく話せる場合、話し方やコミュニケーションの方法に問題があるわけではない可能性が高いためです。
雑談恐怖症は社交不安障害における対人恐怖症の一種であるため、カウンセリングで雑談のハードルになっている問題を解決していくことによって克服に向かっていくこととなります。
雑談恐怖症の特徴とは
雑談恐怖症の症状として多くの方にみられるものが、決まった内容であれば問題なく話をすることが出来るにも関わらず雑談になると急に話せなくなってしまうというものです。
生活の中に雑談が求められる場はたくさんあるため、その分悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
例えば、仕事上のやり取りなど答えがある程度事前に用意できたり決まったりしている会話に関しては特に困ることなくこなすことが出来ています。
ただし、その中でも自分の想定していなかった話が急に出てきてしまったりすると、とたんにどうしたらいいのか分からなくなって頭が真っ白になり会話に詰まってしまうのです。
また、コミュニケーションが下手であり、咄嗟に面白い話やためになる話が出来ないと考えているため、普段から相手が興味を持ちそうなことや聞いてきそうなことについて一生懸命考えて用意をしていたりすることもあります。
雑談は相手と仲良くなるためのコミュニケーションツールでもあり、そのためにはある程度の自己開示も必要です。しかしながら、この自己開示というものが苦手であるために他人との距離感をうまくはかれず、仲良くなりたい雑談をしたいと思っていても出来ないことに繋がります。
そんな雑談恐怖症を抱えている人には、どんな会話の仕方や考え方が見られやすいのでしょうか。
雑談を特別なもののように捉えている
雑談が苦手な方は、雑談というものを特別なもののように捉えて自分でハードルを上げていることが多いです。
しかしそもそも雑談とは、とくに中身がないことを適当に話すもの。
辞書にも<さまざまな内容のことを気楽に話すこと。また、その話。とりとめのない話。>と載っていたりします。
つまり、基本的には”何を話してもいいし、何を話さなくてもいい”んですよね。
正解も不正解もなく、思いついたままに発言してみたり、相手の話に気になるところがあれば質問してみたり。
間違ったことを言ったとしても別にその場で問題が無ければ聞き流される。
自分の言ったことが違って受け止められてたとしても困らないならばそのまま放っておく。
前と同じ話をしていたとしても構わないですし、なんなら「何回同じ話してんねん!」「自分その話好きやなぁ」とツッコミの種にもなる。
親しい間柄であればあるほど会話は緩くなりやすく、「あれ?今何の話してたっけ?」なんてことも起こったりします。
状況によっては気を遣いながら話さなければいけないこともありますが、基本的には”雑談”という会話はお互いにあまり構えずにそこそこ適当に話をするものと捉えてもらうくらいで良いかと思います。
雑談に結果や成果を求めている
”雑談を特別なもののように捉える”と少し似ているのですが、雑談が苦手な方は雑談による結果や成果を求めている部分があります。
例えば<話が10分以上続いた>とか<場が盛り上がった>とか<沈黙にならなかった>とか。
そういった分かりやすい結果が得られなければ、雑談に”失敗”したと思いがちです。
しかし前述した通り、雑談とは本来自分が話したいことを話して聞きたいことを聞くような会話であり、成功や失敗があるものでもなんらかの成果が得られるものでもありません。
多少は相手によって話すことを変えたりもしますが、基本的には自分の話したいことを話したら良いんですよね。
私たちはどれだけ考えたところで相手のこころを読めることはありません。
全く同じことを話したとしても、相手の体調や状況・その時の気分によって反応は大きく変わる可能性があります。
それを事前に全て把握しておくことなんて不可能です。
そのため、自分が楽しく話が出来て、結果的に相手も楽しんでくれればそれでOKなのです。
結果を求めすぎるあまり、自分が会話を楽しむ感覚を失ってしまっていれば元も子もありません。
会話が本来は楽しいものであるという感覚を取り戻し、成功体験を重ねることでだんだんと雑談への恐怖感は薄らいでいきます。
会話の中で受け身になりやすい
雑談が苦手な方は、自分は話すのが下手であるという意識が強かったり、自分のことを知られたくないという思いがあったりする傾向があるため、相手から話しかけてもらえるのを待っていることが多い印象です。
さらに<話しかけてもらう→聞かれたことに答える→相手がさらに質問する→それに答える>ということを繰り返すような会話の中での受け身の状態になってしまっています。
その状態を続けていると、自分の力で会話を展開させていく力が養われないため、だんだん相手に話しかけてもらって答えるときの返事さえも一定のパターンだけになっていきます。
例えば、「そうなんだー」といった相槌や、「〇〇なんだね」といったオウム返しのような感じですね。
そうしているうちに相手も会話を展開させることが難しくなり、沈黙になってしまう。
沈黙になると焦って何かを話そうとして余計に混乱してしまったり、はたまたそのまま気まずい雰囲気を耐え続けたり……。
その結果、またうまくいかなかったと感じてさらに雑談を避けるようになり、雑談恐怖が悪化していきます。
相手に気を遣い過ぎている
雑談が苦手な方は、相手のことを優先しすぎてしまっている傾向があります。
自分が話していて楽しいかということよりも、その話題によって・今の雑談によって相手がどう思うかを感情に気にしているんですよね。
何か話を聞いてほしいことや話したいことがあったとしても、「こんなこと聞きたくないんじゃないか」「相手にとっては興味のない話なんじゃないか」など勝手に相手の考えを判断して言わない。
相手の話に対して質問をしてみて反応が素っ気ないと、「嫌な気持ちにさせてしまったんじゃないか」「変なことを聞いてしまったんじゃないか」と不安になる。
会話の間に沈黙が少しでも出来ると、「自分と話していても面白くないんじゃないか」「もう話したくないと思っているんじゃないか」と考える。
相手のことを詳しく聞くのは失礼になるのではないかと必要以上に心配して何も聞けなくなったり、何人かで話していると邪魔になってはいけないと考え話に入るタイミングが分からなくなってしまったり。
雑談のみに留まらずLINEやメールなど見返せる会話の場合は、何度も文章を確認することで送るまでにかなりの時間がかかってしまうこともあります。
まとめ
雑談恐怖症の方には、これらのうちのいくつかの特徴がみられることが多くあります。
そのため、カウンセリングの中で少しずつ持っている考え方や物事の捉え方にアプローチしていき、変化させていくことによって雑談を楽しいものとして深く考えずに行うことができるようになることが最終的な目標となるかと思います。
これまでの経験や習慣の中で身に着けてきた特徴であるため、一朝一夕で変化させることは難しいかもしれません。
それでも、まったく何もしないままでは状況は変わらないのも事実です。
まずは変化のための一歩を踏み出してみてもらえたらと思います。