年が明けてからWAIS-Ⅳのご予約をちょこちょこと頂くようになりました。
皆さまそれぞれの理由で受検されるのですが、せっかく時間とお金をかけて受けていただくものですので、WAIS-Ⅳを受けることによってどんなメリットがあるのか、逆にWAIS-Ⅳを受けても分からないことは何なのかを改めてご説明させて頂きたいと思います。
WAIS-Ⅳについての概要の説明はこちら👇
皆さんは、IQという言葉にはなんとなく聞き馴染みがあるかと思います。 IQが高いと天才だ、東大生はIQが120以上あるらしい……とか。 IQテスト、なんて名前のついた心理テストもネット上にはゴロゴロ転がっていますよね。 …
WAIS-Ⅳを受ける目的
今回は知能検査の中でも、当カウンセリングルームでも実施しているWAIS-Ⅳについてみていきます。
WAIS-Ⅳという検査では、<全検査IQ(FSIQ)>と呼ばれる全般的な知的能力を表す数値と、<言語理解(VCI)><知覚推理(PRI)><ワーキングメモリー(WMI)><処理速度(PRI)>と呼ばれる4つの領域にわけられたそれぞれの能力を表す数値が算出されます。
これらの数値は統計学上の分析に基づいて計算されており、自分の力が同年代平均と比べてどのくらいのものなのかを知ることができます。また、それらの数値をみることで、自分がもっている力の凸凹が分かります。
ちなみに、知的障害に関しては、知能指数がおおむね70以下であることが厚生労働省の定める基準の1つとなっています。(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html)
※知能指数のみで判断されることはありません。日常生活をどの程度1人で行うことが出来るかという能力もふまえて診断される形となります。
これらの数値が低くなければそれでいいのかというと、そうとも言えないのが大切な部分です。
先ほども述べたように、この検査では自分がもっている力の凸凹が分かります。
これが大きければ大きいほど、日常生活の中で感じる困り感が大きいと考えられています。
つまり、全体の値が高い人の中にも、それぞれの値の差がほとんど発生しないほど大きい人もいるのです。
その場合は、能力は平均以上にあるのに生活の中でなんとなく出来ないことがあるということも起こり得ます。
これらのことから、知能指数の高い低いを見るだけではなく、自分の得意・不得意を理解してそれをどのように生活の中で活かしていけるか考えるヒントにすることが、WAIS-Ⅳを受ける上での大きな目的だと考えます。
WAIS-Ⅳで測ることの出来る”知能”の限界
WAIS-Ⅳを受けるうえで誤解してはいけないのは、この検査によって全ての能力が測れるわけではない、ということです。
WAISを開発したウェクスラーは、知能を「目的的に行動し、合理的に思考し、環境を効果的に処理するための、個人の集合的ないしは全体的能力」と定義しました。
つまり、WAISで測ることのできる”知能”はこの定義に基づいたものになっています。
全ての知能検査に共通していえることですが、知能検査で測れる能力はあくまでも人間のもつ知的な力の一側面に過ぎません。
例えば、自分の感情を正しく捉えて言葉にして伝える力、といったものも能力の1つですが、それはWAIS-Ⅳでは測ることが出来ないものになります。
そのため、検査の結果と日常の中での感覚がズレることも起こり得ます。
これは知能検査が”検査”という形をとっている以上、課題として取り組む際に使用される能力が限定的であること、社会的な文脈とは切り離されていること、明確な教示があり分かりやすい設定であることなどによるものであると考えられています。
私たちが日常生活の中で接する場面は、検査場面のような整えられた場よりも複雑であり、いくつかの能力を組み合わせて使うことが求められます。そのため、検査のような決められた場面であればできるのに生活の中ではできない、ということが起こってくるのです。
とはいえ、じゃあWAIS-Ⅳを受ける意味ってないじゃん!ということではありません。
WAIS-Ⅳを受けるメリット
WAIS-Ⅳを受けるメリットとしては、目的のところでも述べたように、自分の得意・不得意を客観的に明確にすることで日常生活の困り感に対してアプローチが出来る、ということだと思います。
日常生活を送る中で、自分が得意だ・苦手だと思っているものが、実際にどの程度のものなのかという客観的な判断は検査でしか行うことができないものです。
自分が苦手だと思っていたものが実はそうでもなかった、ということは往々にして起こり得ます。
また、自分の中では苦手だけれど周りと比べたらどうなのか、周りと比べると出来るように感じるけど自分にとってはどうなんだろう、といった感覚が数値として明確に表れるのはWAIS-Ⅳを受ける上で大きなポイントです。
加えて、先ほど触れたように日常生活の中の困り感と検査の結果にはギャップが生まれることがあります。
なぜなら、日常生活では様々な力を組み合わせて使っているからです。
そのため、結果として出てきた数値に対してどのような解釈ができるのか、検査を受けた人の生活の中での感覚とズレているのかいないのか、ズレているとしたらどんな要因が考えられるのか、といったように数値のみではない部分を広げて考える起点となる基準を得られることはWAIS-Ⅳを受ける上でのメリットかと思います。
例えば、ワーキングメモリーが低い人であれば、口頭での指示を出来るだけ減らしてもらう、口頭での指示を受ける際はメモを取るようにする、といった生活上の対応が考えられます。
一方で、ワーキングメモリーは低くないけど言われたことをすぐに忘れてしまうといった場合は、そこにはワーキングメモリー以外の問題が隠れていることが推測されるため、それが何なのかを考えるきっかけに出来ます。もしかすると周りがざわざわしていると集中できないといった過敏性の課題があるのかもしれません。言語理解が低い場合は、言われていることを理解できておらず忘れてしまっているわけではないけれど指示通りに出来ないということが起こっている可能性もあるでしょう。他にももっといろいろなパターンがあるかもしれません。
検査の結果として出てくる数値からは、一般的にこういうことが起こるだろうと考えられる困り感が示されます。しかし、能力の凸凹やその掛け合わせによって解釈は幅広いものとなります。
これを踏まえて、受検された方自身が持っている困り感とつなぎ合わせて対応策を考えたり、自分に対する理解を深めたりすることが出来るかどうかは、とても大切であると考えます。
当カウンセリングルームでは、WAIS-Ⅳの実施に合わせてフィードバックの面接もご案内しています。
その際には、心理士がこれらの数値をどのように読み取ったのかを伝え、面接の中で受検された方の実際に困っていることと照らし合わせながら一緒にこれからの生活の中の工夫を考えることが出来ます。
もしよろしければ、受検の際にはフィードバック面接もご利用頂けるとよりメリットを実感いただけるのではないかと思います。
WAIS-Ⅳにご興味のある方は、お気軽にお問合せくださいね♪