「なんで結婚しないの?」
「独身は気楽でいいよね」
「早く結婚したほうがいいよ」
親戚から、上司から、同僚から、はたまた友人から……
こんな言葉を受けたことはあるでしょうか。
放っておいてほしい、なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ、と辛くなったり、悩んでしまうこともあるかもしれません。
これらはシングルハラスメントと呼ばれているもので、ハラスメントの一種です。
シングルハラスメントを受けた時、どう対処したらいいのでしょうか。
シングルハラスメントとはどういうもの?
シングルハラスメントとは
結婚に関する話題で未婚の男女を不安にさせたり、尊厳を傷つけたりする行為をさします。
言った側にとっては「そんなことで」「親切でいったのに」「雑談の一部」と思うかもしれませんが、言われた側は価値観や生き方を傷付けられ、苦痛に感じることも多くあります。これは男女問わず起こりうることであり、ハラスメント行為の一種です。
女性ファッション雑誌である『steady.』が2016年に行った読者アンケートによると
約92%の女性が、シングルハラスメントを経験したことがあるとされています。
シングルハラスメントの具体例
- 「早く結婚したほうがいいよ」「次はあなたの番だね」
友人の結婚式の席や、寿退社する方の送別会などでかけられることが多い言葉です。
結婚をするかどうか、いつするのか、ということは人それぞれ価値観があります。
相手の意向をくまずに、自分の価値観を押し付けてしまうことは相手を傷付けてしまうことにつながりかねません。 - 「独身は気楽でいいよね」「独身だったら何があってもすぐ対応できるでしょ」
独身であろうと既婚であろうと、プライベートの時間は平等であるべきです。
独身だからといって、残業や休日出勤・トラブル対応を押し付けるのはハラスメントに当たります。 - 「だから結婚できないんだよ」
業務上の不備やミスを注意する際に、独身を引き合いに出すことも良くありません。
仕事の出来と、プライベートでの交友関係は直接関係のないことです。
また、家などで「こうやって片づけができてないから結婚できないんだ」と家族や親戚から言われる場合も同様にハラスメントに当たります。 - 「一人だと老後が不安じゃない?」「誰も頼れないと病気になったときに困るよね」
独身でいることによる不安をあおる発言もハラスメントにつながります。
不測の事態が起こったときにどうなるのかは、既婚・未婚共に分かりません。
結婚だけが不安を解消する方法では決してないのですが、シングルハラスメントを行う人は結婚=不安の解消という考えを持っています。
シングルハラスメントを行う人の心理
シングルハラスメントを行う人の価値観の中には「結婚=幸せなこと」というものがあります。
これは自分が結婚をしたことで幸せであるかどうかに関わらず盲目的にそう思い込んでいる場合と、自分が結婚によって実際に幸せであるからこそ勧めたいという善意の場合があります。
また、人間には自分の過去を否定したくない心理があります。
過去は変えられないものであるため、自分で自分の過去を否定してしまうと、その結果にある現在や未来に希望を持ちにくくなってしまうためです。
このことから、実際の結婚生活がどのような状態であったとしても<結婚という選択をした自分は正しかった。幸せである>ということを自分に言い聞かせたいために、独身者に対して「結婚=幸せ」という価値観を押し付けることになります。
「独身は気楽でいいよね」等の発言については、その裏に自分の結婚生活への不満が隠れていることもあります。<独身は気楽でいい>という言葉は、<結婚生活は不自由である>という言葉と表裏一体です。
自分が失ってしまった気楽さを求めるがゆえに、嫌味を言ってしまっている場合もあります。
シングルハラスメントへの対処法
相手の言葉を繰り返すことでスルーする
淡々と受け答えをして、その場をやり過ごすことは対処法として有効な方法です。
相手の感覚や価値観を変えることは難しいため言っても分かってもらえないかもしれない、かといって話を無視をすることも角が立ってしまう。そのため、受け流すことによって心の負担を少しでも軽くしましょう。
例えば
「独身は気楽でいいですよね」→「そうですね、気楽ですね」
「早く結婚したほうがいいよ」→「はい、そのほうがいいですよね」
「1人だと老後が不安じゃない?」→「そうですね、心配です」
「どうして結婚しないの?」→「そうですよね、どうして結婚しないんでしょうね?」
このように、言われた言葉に対して一度受け止めてオウム返しすることがポイントです。
シングルハラスメントを行う人は深く考えて発言しているわけではありませんので、こちらもその発言に対して深く考える必要はないですよね。
相手の言葉に対して肯定も否定もせず、ただ繰り返すだけであればそれ以上その会話は広がっていきません。
会話が広がらないと、話題は別のところへと移って話が進んでいきます。
むきになって感情的に反論すると相手の思うつぼなので、冷静にてきとうに流してしまいましょう。
ハラスメントだと伝える
はっきりと伝えられる関係性であれば、その発言がハラスメントであると伝えてしまうのも1つです。
<ハラスメント=よくないこと>という認識は浸透してきているため、相手が善意のつもりで発言している場合には気付きを促すことにもつながります。
職場などにおいてどうにもならない場合や何度も繰り返される場合は、社内外の相談窓口に相談することも大切です。
自分1人で抱え込んでいるとストレスをため込んでしまうことにつながるため、社内の相談窓口もしくは労働局など社外の窓口に1度相談してみましょう。
自分の受け止め方を変えてみる
相手が変わらないのであれば、自分の受け止め方を変えるしかありません。
シングルハラスメントを行う人は、自分の過去を否定したくない気持ちがあるのは前述したとおりです。
そのため、シングルハラスメントは幸せの押し付けではない場合もあります。
あなた自身の状況は関係なく、ハラスメントをしている人がその人自身のために口にしているに過ぎないのです。
また、自分の中の価値観を明確にしておくことによって、人から言われたことで簡単には揺らがなくなります。
とはいっても、周りから何度も言われると不安にはなるものですよね。
その中でも、自分の人生に責任を持っているのは自分だけ、という思いをしっかりと持てているといいと思います。あなたに結婚を勧めている人は、あなたの結婚に責任を取ってくれるわけではありません。
1人では受け止め方を変えていくことが難しい場合は、カウンセリングなどで第三者から話を聞きながら考えを整理することも1つの方法です。
シングルハラスメントは価値観の相違からうまれる
シングルハラスメントは、”価値観の押し付け”です。
相手がそれを正しいと思っていたり、善意であったりする以上、正面から反論を述べたり、相手の価値観を変えようとすることは自分自身が疲れてしまいます。
「女性は子どもを産んだら一人前」「子育ては経験しておくべき」といった考えが昔は一般的であったように、社会が変化する中で価値観は変わっていきます。
全てさまざまな価値観の中の1つにすぎず、どれが正しいということではないですよね。
誰かの価値観に惑わされることなくお互いの価値観を受け止めながら、自分らしく生きていくことが出来ることが一番ではないかと思います。