
◆突然、夫が犯罪者になってしまった
「まさか、うちの人が…」
世間からの目、親族の反応、将来への不安…いろいろなものが一度に押し寄せ、言葉にならなくなります。
何が正解か分からなくなる日々を、あなたは今、懸命に生きているのではないでしょうか。
この記事では、罪を犯した夫に対して葛藤する妻への心理的な取り組みについてお話していきたいと思います。
◆これからどうしていけばいいのか
夫が犯した罪への怒り、失望、恥、そして世間の冷たい視線。
さまざまな感情が混ざり合い、簡単に「許す」なんて言えませんよね。
それでも夫を見捨てるわけにもいかない気持ちや、離れられない気持ちがあると思います。
もう二度と過ちを繰り返してほしくない・・・。
そんな気持ちに寄り添い、再犯しないためのサポートを一緒に取り組んでいきたいと思います。
◆社会的絆理論:犯罪から離れやすくなるための取り組み
夫の更生を支える上で妻としてどのように関わっていけるのか、社会的絆理論という心理学の視点からご紹介していきます。
社会的絆理論とは?
この理論では、「人は社会との絆が強ければ強いほど、非行や犯罪から離れやすくなる」と言われています。
この理論で言う”絆”とは、次の4つの要素で構成されています。
愛着:【人に対する愛情や尊敬の気持ち】
家族や友人や社会的に信頼関係があると、「相手にガッカリされたくない、悲しませたくない」という思いが強まります。
そんな思いを増やし改めて認識することで、自分の行動を抑制することができます。
取り組み:【まっとうな生活への投資】
仕事や家庭、会社での評価、将来の夢など、積み上げてきたものがあると「それを壊したくない」という思いが強まります。
何かに向けて努力し苦労することで、より一層その感覚は強まります。
関与:【社会的に意味のある活動への参加】
日常生活や社会活動が忙しく充実していると、そもそも悪いことを考える暇がなくなります。
趣味や地域活動、資格勉強などが一例です。
信念:【ルールを守ることへの納得感】
日常や社会のルールがなぜ決められたものなのかや、どうして守らないといけないのか、その根本を見直します。
ルールを守ることへの価値を見出し、「見つからなければいい」「バレなければいい」などの考えも浮かびにくくなります。
これらの取り組みを少しずつ行い、理論上の理解ではなく体験を通した理解を重ねていきます。
そのためあなたという「最も身近な存在」が、夫が社会との間に絆を感じ取れるかや感じ続けられるかに影響を与えます。
◆これから夫とはどう関わっていけばいい?
「絆を作る」と聞くと今までは絆が無かったの?と不安になるかもしれませんが、もちろんそうではありません。
絆があっても意識して見ようとしなければ薄れて霞んでしまうものです。
今後は意識をしながら見つめ向き合うことが必要です。
日常の中でできることからで大丈夫です。
以下に、関わり方の例を紹介します。参考にしてください。
1.【責めない、問い詰めない】
夫の行為は許されるものではないとしても、あなたの「正論」は夫を追い詰めるだけになることもあります。
責める代わりに、「今後どうしていきたい?」「どうなりたい?」と未来に目を向ける対話を意識しましょう。
2.【小さな約束を守る関係を積み上げる】
たとえば「家事を後回しにしない」「帰宅時間を守る」など、夫婦間でできる小さな約束を重ねることで、信頼を育て直すことができます。
ルールを破ると妻を傷つけることや信頼が壊れることを学び直すことで、社会のルールを破ること同様であるという認識を強めていきます。
3.【第三者の支援を受ける】
1人で抱えるのではなく、更生支援の専門機関やカウンセラーとの連携が重要です。
数多いケースを見てきた専門家たちですので、冷静な視点や新たな方法を得ることができます。
4.【社会との接点を少しずつ取り戻す】
もし、夫が職を失った場合は本人が就労支援や地域の活動に関わることはもちろん、あなた自身も「家族として世間と繋がること」を意識してみてください。
社会的な孤立は、夫だけでなくあなたの心も蝕みます。
職を失っていない場合でも、信頼し合える仲間の存在や、失いたくない地位などを意識することで、犯罪行動を抑制できます。
5.【感情は抑えず整理する】
これは夫本人にも言えることです。
一見、冷静で感情の浮き沈みがない夫でも、実は感情を無意識的に抑圧している可能性が高いです。
精神が安定しているというのは、感情を抑圧することではなくコントロールすることです、
「許せない」「悲しい」そんな感情を無理に押し殺すのではなく、自分自身の心と向き合う時間を持ちましょう。
あなたの心の健康も、夫の再出発には欠かせません。
◆妻のサポートがもつ「影響力」
多くの加害者支援の現場では、「家族の支えがあったかどうか」が更生の成否に大きく影響していると報告されています。
特に「妻」の存在は、
- 自分を信じてくれたという実感
- 戻る場所があるという安心感
- もう一度社会とつながりたい
という意欲につながります。
もちろん、支えることは簡単ではありませんので、時には「なんで私がここまで…」と感じることもあるでしょう。
それでも、あなたが「ひとりじゃない」と感じられる場所があれば、少しでも前を向ける日が増えるはずです。
◆あなたと、夫と、社会の再構築のために
私たちは、夫の更生を支える妻たちに寄り添いながら、現実的な道を共に考えるカウンセリングを行っています。
「強くならなきゃ」「〇〇でなくてはいけない」と思い詰める必要はありません。
まずは、話すことからでもかまいません。
小さな一歩が、夫の未来、そしてあなた自身の人生を変えていく力になるのです。
あなた自身のためにも、そして次の被害者がいない未来の社会のためにも、カウンセリングをご検討ください。