コミュニケーション能力とは何なのか
あの人はコミュ力がある、自分はコミュ障だから……など、現代は「コミュ力」という言葉が日常の中でよく使われるようになりました。
採用選考においてもコミュニケーション能力が大きく重視されていたりと、社会の中で生きていくためにはコミュニケーションの力は重要ですよね。
プライベートの範囲では”誰とでも仲良くできる能力”というエピソードで語られがちなこのスキルですが、社会の中で求められている「コミュニケーションのスキル」は実は違っているのはご存じですか?
「コミュニケーションスキル」はとても抽象的な概念であり、完璧に理解するためには1つ1つを細かくみていかなければいけません。
一言で「コミュニケーションスキル」と言ったところで、その実際はたくさんの小さなスキルに分かれているということであり、その中では誰しも得意・不得意が出てくるはずなのです。
コミュニケーションは
「相手の意見を聞く」
「相手に意見を伝える」
「双方の意見を検討したのち具体的なアクションを起こす」
という3つのステップが基本です。
今回は3つのステップにおける、「相手に意見を伝える」というフェーズで重要になる<アサーション>というスキルについて一緒に確認していきましょう。
このスキルは話し合いをするときのポイントの1つでもあります。
アサーションというコミュニケーション方法
コミュニケーションスキルにおけるアサーション(Assertion)とは、相手を尊重しつつ自分の意見を伝えるコミュニケーション方法の一つです。
自分も相手も大切にするための自己表現であり、自分の考え・欲求・気持ちなどを“率直に”“正直に”“その場の状況にあった適切な方法で”述べることが重要です。
それってどんな自己表現なのでしょうか?
自己主張のタイプと一緒にみていきましょう。
よくドラえもんのキャラクターに例えられるので、ここでも分かりやすいように同じ形でお伝えしますね。
アグレッシブ(攻撃型)
アグレッシブタイプは、思ったことをズバズバと率直に伝えるスタイルが特徴です。
分かりやすい言葉を使ったり、大声を張り上げたりと強い要求を示します。
自分の意志を貫くためであれば、他者の気持ちや状況はあまり考えないタイプです。
自分の主張をはっきりと伝えることは出来ますが、他者の考えに無頓着なので自分の考えを相手に無理やり押し付けてしまうことが多く、周囲の人と衝突しやすい傾向があります。
ドラえもんで例えると、ジャイアンがこのタイプに当たります。
他者を力強く牽引するリーダーシップは強みですが、他者に抑圧的な態度をとってしまい配慮がおざなりになりやすいことに注意が必要です。
ノン・アサーティブ(非主張型)
ノン・アサーティブタイプは、自分より相手を尊重し、あまり主張をしないスタイルが特徴です。
自分の意見の優先順位が低いため、自己主張が控えめ、もしくは苦手です。
他者の意見を受け入れることで話を進めていくので、相手任せになりすぎるタイプです。
周りと衝突するようなことはほとんどありませんが、自己否定的になりやすく、思ったことを言えないため
曖昧な言い方で問題をかわそうとしたり、何かあった時に黙りがちな傾向があります。
ドラえもんで例えると、のび太がこのタイプに当たります。
弱い立場の人への理解があり、共感を持って接することの出来る穏やかさは強みですが、言い訳が口癖になりやすく、責任を他者に押し付けがちな部分には注意が必要です。
また、言いたいことが言えずストレスがたまりやすいため、どこかのタイミングで感情が爆発してしまうリスクを抱えています。
アサーティブ(中立型)
アサーティブタイプは、アグレッシブとノン・アサーティブのバランスをとったスタイルが特徴です。
自分がするべきである主張や自分の気持ちは率直に伝えることができます。
そのうえで、相手の気持ちや状況にも配慮することができるタイプです。
いつ主張し、いつ自分を抑えるのかという判断を状況に応じて行い、自分の要求をしっかりと伝えながらも相手に誠実さや思いやりを持って向き合える傾向があります。
ドラえもんで例えると、しずかちゃんがこのタイプに当たります。
主張すべき部分と引き際を理解しており、その場を俯瞰的にみながら振る舞いや言葉の表現を調整できる強みがあります。
嫌われる要素が実質存在しないため、アサーションにおける理想形となっています。
アサーティブなコミュニケーションをとるために
ここまでで<アサーション>が自分の意見を押し通すだけのスキルではないことはお分かり頂けたかと思います。
アサーションの理想は、前述の<アサーティブ>になります。
自分と相手、場全体の動きを読みながら、全員によってのより良い結論に達することを目的としています。
アサーションには4つの柱があります。
⒈誠実
まずは自分にも、相手にも誠実になること。
相手や自分の気持ちに対して真摯に向き合うことが重要です。
⒉率直
要求や現状は率直に伝えましょう。回りくどい言い方では相手に伝わらないこともあります。
相手に正しく伝えることが重要です。
⒊対等
相手と常に対等であることを意識しましょう。
押しつけるのでもなく、おもねる必要もありません。
⒋自己責任
自分の言動に責任を持ち
言ったことだけでなく言わなかったことに対する責任も持ちましょう。
これらの要素を頭の片隅に入れておくと、アサーティブなコミュニケーションを実践しやすくなります。
アサーション・トレーニング
<アサーティブ>の基本となるのは、自己主張の段取りです。
相手が主体ではなく、自分を主体とした表現から入りましょう。
自分を基準とした例を見せてからコミュニケーションが始められるため、円滑なやりとりを目指すことが出来るとされています。
ほかにも以下のような点に注意して、練習を繰り返してみてください。
①Youメッセージではなく、Iメッセージにして話す
「あなた」を主語にすると相手を責める口調になりやすいですが、主語を「わたし」に変えると自分の主張を相手を傷付けずに伝えられます。
× (あなたは)どうしていつも報告書の提出が遅いのか
〇 (わたしは)報告書を早く提出してくれると助かる
また、Iメッセージは断る時や相手の意見に同意できないときにも「私はこう思う」と相手を否定する表現にならないため、比較的楽に気持ちを伝えることができます。
②自分の気持ちを加えて主張する
自分の感情や、今の気持ちを伝える表現を加えると正直な意志が伝えやすくなります。
「~していただけると助かります」「~に対して困っています」など
③お願いの表現を使う
「~すべき」「~しなさい」など断定・支配・命令的な主張は強い要求となり、相手の反発を招く恐れがあります。
お願いの表現を使って、意見の対立を防ぎ、話し合いの余地が生まれるようにしておきましょう。
「~して欲しい」「~してください」など
④肯定的な言葉で終わらせる
「~できない」という否定的な言葉は相手も受け入れにくくなってしまいます。
しかし、職場でも日常でも、否定をしなければいけない場面はあるかと思います。
否定したくないから曖昧に言葉を濁してその場を流してしまうのは違いますよね。
言葉を否定だけで終わらせず、前向きな代案を一緒に提案するようにしましょう。
「明日までにはできませんが、明後日まででしたらいかがでしょうか?」など
終わりに
今すぐに全てのコミュニケーションを変えることは難しいかもしれません。
スキルは練習を繰り返すことで身につきます。
ジャイアンタイプやのび太タイプだった方は失敗しながらも、何度も練習をしてみてください。
相手も自分も尊重するコミュニケーションを身につけることは、仕事や人間関係の安定にもつながりますし、将来的に自分を守ることにもなるかと思います。
すぐに全てが完璧に出来る人はいません。
頭の片隅に<アサーション>の考え方を置きながら少しずつ、出来る範囲から試してみてくださいね。