「うまくいかなかったらどうしよう」
「嫌われたらどうしよう」
「もし〇〇になってしまったら」
私たちの生活の中にはたくさんの不安が存在しています。
不安な気持ちは危険を察知するために必要であり、それ自体は無くせばいいというものではありません。
一方で、その気持ちでいっぱいいっぱいになってしまうと、うまく生活が送れなくなってしまいます。
不安とうまく付き合っていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
そもそも不安ってなんだろう
不安は、日常生活の中で、漠然とした特定できない曖昧な脅威を察知したときに、自我の危機としてだれもが経験する心的反応であり、不確定性と無力感を伴う心理的状態である。
しかし、不安ということばによって表現される意味と内容、程度、現われ方は多様である。
不安は主観的に体験される現象であるとともに、生体内の多システムのさまざまなレベルで生じる測定可能な生理的反応でもあり、同時に第三者が観察することのできる言語的および非言語的な客観性を帯びた行動的反応でもある。
出典:最新 心理学辞典
この定義によると、不安は<だれもが経験する>こころの動きであるが、その<意味と内容、程度、現われ方>には差があるということが分かります。つまり、みんな持っているけれどそれぞれの人によって感じ方や程度が違うものが不安です。
不安は、私たちが危ないことや大変なことに備えるための信号になっています。
例えば、地震が起きた時に不安だから非常用袋を用意しておく、夜道を歩くのは不安だから出来るだけ明るい道を選んで通るなど、起こり得るリスクに事前に対応したり、避けたりすることが出来るように、私たちには不安という感情が備わっているんです。
しかし、先ほども出てきたように不安の程度は人それぞれ異なります。必要以上の強さで不安を感じて、それに対処が出来ないと、日常生活を送ることが難しくなってしまいますよね。
日常生活を送るのが難しいくらいの不安を抱えている場合は、不安をなくすのではなく、日常生活を送れるくらいのレベルまで下げる必要があります。
不安には、<いま対処できる>ものと<対処できない>ものがある
例えば、【明日会社でプレゼンがある】という状況を考えてみましょう。
うまくプレゼンが出来るのか、不安な気持ちがあるかもしれません。
不安は自分にとって危険なことに対して起こる感情です。この場合は、<いまの自分の準備状況であればプレゼンで失敗する可能性が高い>といったリスクを感じていることが考えられますよね。これは確かに危険で、不安が強くなるのも当然のように思われます。
それでは、この不安に対して<いま対処できる>ことはなんでしょうか?
いまの自分の準備状況が足りていないのであれば、もう少し準備を整えることが必要かもしれません。
・足りていない資料がないか再度確認する
・声に出してリハーサルをしてみる
・誰かに一緒に見てみてもらう
・プレゼンの内容を暗記しているか確かめる
といったところでしょうか。
現在抱えている不安に対して、今自分が出来る行動を考えて、実行すること。
これは不安を正しく活用して、対処するために重要です。
では、今自分に出来る行動を全て行ったとして、不安はなくなるでしょうか?
決してそんなことはありません。
やるべきことをやったとしても、まだ出来ることがあるんじゃないか、何か見逃しているんじゃないかと考えてしまうのが私たち人間です。完璧かどうかは誰も保証してくれないし、実際に結果もどうなるか分からない。これだけやったとしても失敗するかもしれない、こんな不安は感じるしかありません。これが<対処できない不安>です。
本番で上手に話せるだろうか、周りはどんな反応をするだろうか、上司から何を言われるだろうか、といった不安は当日になるまでは誰にも分からないのです。
これらの不安は、感じるのが自然であり、どうすることも出来ませんし、どうする必要もありません。
この<対処できない不安>に無理やり対処しようとしてしまうと、不安はどんどんと大きくなり、自分では扱いきれなくなってしまいます。
<対処できない>不安はどうしたらいい?
<対処できない>不安に対して一番やってはいけないことが、この不安を否定して、無くしてしまおうとすることです。
考えないようにしようとする、不安に感じる必要はないと自分に言い聞かせる、何か適当に理屈をつけて問題ないと思い込む、誰かに「大丈夫だよ」と保証してもらう……といったことですね。
これは、逆に不安をどんどん大きくしてしまうことに繋がります。
なぜなら、不安を消そうとしている時点で不安を強く感じていることを意識し続けてしまっているからです。
先ほどから何度か出てきているように、不安は人間だれしもあって当然のもの。
決して無理になくしてしまう必要はありませんし、なくなりません。
自分が不安を感じている、ということをそのまま、受け止めて抱えることが大切になります。
どんな風に不安なのか、ドキドキするのか、喉がつかえる感じがあるのか、落ち着かなくてそわそわするのか、自分の今感じている感覚をただ追いかけてみてください。
その上で、その感覚を持ったままで構わないので、今しなければならないことをしましょう。
例えば、明日のプレゼンのために早く寝る、しっかりと休みを取る、一度気分転換をしておく、なんでも構いません。
不安を自分の中に置いておくと大きくなっていってしまう場合は、紙に書き出したり、周りに相談するのもいいかもしれません。その際は、不安を感じるのは当然なんだ、とその不安を認めてあげることが重要です。
不安と付き合っていく
不安とは「~~したい」「~~でありたい」といった欲求があるからこそ出てくる感覚です。
だからこそ不安を感じた時には、不安な気持ちから逃げたり、不安な感覚自体を消し去ろうとするのではなく、その不安を感じる後ろにはどんな欲求があるのかを考えて、それを実現するためにするべきことを行動に起こすことが必要です。
「不安だから出来ない、やりたくない」「不安だからどうせダメだ」ということではなく、「不安でもやる」ということがとても大切になります。ここで行動しないままになってしまうと、次に同じことと向き合った時に不安はさらに大きくなってしまうからです。
その際の注意事項としては、<結果だけではなく過程をみること>が重要です。
プレゼンを成功させる、という結果は当然大切です。成功しないよりは成功したほうがいいでしょう。
でも、成功しなかったからといって、果たして全てがダメなのでしょうか?
私たちは全ての結果をコントロールすることはできません。だからこそ、対処できない不安があるわけです。コントロールできないことは大きな不安につながります。いくら受け止めるといっても、大きすぎる不安は受け止められないですよね。
ただし、過程に関してはある程度コントロールが可能です。自分がどれだけ頑張るか、ですからね。
常にその時自分のできる最善をつくすことは、自分をコントロールする感覚を養います。
この感覚が大きな不安を小さくしてくれる力を持っています。
最善をつくしたからといって、100%うまくいくわけではありません。
でも、最善をつくしたら、以前の自分よりは少しだけできることが増えているかもしれません。
自分の目標に向かって、今出来ることに集中し、着実に歩みを進めていくプロセスをしっかりと意識すること、それが結果だけにとらわれなくするコツです。
不安に思っていることが現実になるとは限らない。であれば、自分が望んでいる欲求を達成するために、今出来ることを精一杯やったほうがいいですよね。
そうして行動しているうちに、不安な気持ちは少しずつ小さくなっていき、扱える大きさになってくれます。
すぐにはこうした考え方をするのは難しいと思います。なので、まずはそう思えなくても行動してみることがとても大切です。自分だけじゃやっぱり避けてしまう……という場合は、カウンセリングを活用してみるのも1つの方法です。