問題を止める

家族とは一番身近な社会集団であり、一番身近な他人です。
子どもにとっては最初に触れることになる人間関係でもあります。

そのため十分に正しく機能することが求められますが、そのように機能することが出来ない家庭も中には存在しています。

そんな<機能不全家族>と呼ばれる家庭環境について、触れていきたいと思います。

機能不全家族ってどんな特徴がある?

そもそも家族とはなんなのか

一言に家族と言ってもいろいろな形があります。
何一つ問題はなく《完全に正しい家族》なんてものは存在しないでしょう。

どの家族も少なからず問題を抱え、主に大人である両親がそれを解決するための努力をすることによって支えられている面が大きいかと思います。

過去は家制度を元にして成り立っていた家族という形ですが、現代では互いの関係性により成り立つものとなっています。

家族という集団が健康的に機能している場合は、子どもは身近な大人を見本にして生きていく上で必要な様々な能力を身につけます。
家族という集団が安全・安心であると感じることによって、色々な他の集団に挑戦し、その結果多くの経験を積むことができるのです。
幼少期の自分というものを形成していく時期に、自分自身が脅かされる心配のない状態の中で多様な考え方に触れることによって、自分とは何なのかを考え、社会に適応する方法を学んでいきます。

子どもが社会に出て周りとうまく過ごしていくためには、家族の中で何を学んできたのか・安心感を得られているのか、ということはとても重要なのです。

機能不全家族の特徴

そうした安心感が得ずらい家庭環境が機能不全家族です。
具体的に機能不全家族には以下のような特徴があるといわれています。

  1. 非合理的なルールが存在している
  2. 親が親役割が放棄し、子どもが親役割をする
  3. 家庭に他の人が入ることに強く抵抗する
  4. 雰囲気がとても暗い
  5. 家族間でプライバシーが侵害されている
  6. 家族から離れることができない
  7. 家族のなかで起こった苦痛や大変さは無視される
  8. 変化することに著しく抵抗する
  9. 家族同士が分断されている

出典:ジャネット・G・ウォイティッツ「アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち」金剛出版 1997

これらの特徴があるから必ず機能不全家族である、ということではありませんが、そうである可能性は高いかもしれません。

このような特徴が家族の中にあると、家族の中でも特に弱い立場に居る者=子どもがダメージを受けることになります。
こうしてダメージを負わされている子どもは「アダルト・チルドレン」と呼ばれる状態となることもあり、子どものうちだけでなく大人になってからも人との関わりの中で生きづらさやしんどさを抱えることが多いために、問題とされています。

機能不全家族に気付くこと

機能不全家族の中にいる時、当事者はなかなかそのことに気付けない場合も多くあります。
なぜなら、自分が知っている家族の形以外の家族がどんなものなのかを見る機会はほとんどなく、たとえ見ることがあったとしても「自分の家が普通で、向こうが特殊」と思いやすいためです。

生活を送っている中で「なんだかしんどいな」という感覚があったら、気のせいと考えるのではなく一旦自分の置かれている状況を客観的に見ることが必要です。

「家族だから」「親子だから」「家族とはこうあるべき」といった常識や概念はすべて脇に置いて、別の人間同士の間で起きている事実だけを捉えてみてください。

「あなたが悪い」「お前のためを思って言っている」「愛しているからこそ」
そんな言葉に覚えがあるようであれば、特に一度立ち止まって考えてみてください。

家族の中で息苦しさやしんどさを感じることがあるのであれば、それはあなた自身のせいではないかもしれません。表面上は問題がないように見えていたとしても、そこには家族全体の抱える何かしらの問題がある可能性が高いのです。

機能不全家族による影響

機能不全家族の中で育つと、大人になって様々な問題が生じます。

人の顔色が気になる

家族の誰かの機嫌を損ねないように気を遣って生活をしてきた経験から、常に周りの顔色をうかがうようになってしまいます。

元は家族に対してのみ行っていた行動であったかもしれません、

しかし、それが日常的になっていると他人に対しても同じように行ってしまうようになり、少しでも機嫌の悪さを察知すると先回りして対処しようとしてしまいます。

そうして相手と悪い関係にならないようにしておくことが、どんな場合においても悪いというわけではありません。しかし、周りの機嫌をうかがってばかりいると、いつも不安と緊張を感じながら生活しており、リラックスすることが難しくなります。その結果、人との関係の中で安心や安全を感じることが出来なくなってしまいます。

誰かといても孤独を感じる

これまで家族の中で決定権を持つ誰かに従ってきたため、自分で何かを考えたり、決めたりということがとても苦手です。

自分が自分であるというアイデンティティが形成されていないのです。

一人で居る・一人で行動する、ということが出来ないため、常に心細さや誰かと一緒に居たいと感じて人を求めます。

しかし、そうやって誰かと一緒にいたとしても、いつか見捨てられるのではないか・嫌われるのではないかと感じ別の不安でいっぱいになってしまうのです。

他者に依存してしまう

上記のように、自分で決めること・考えることが苦手であるために、誰かに決めてほしい・代わりに考えてほしいと感じています。

そのため、身近な人に依存することによってその人の言う通りに判断したり、行動したり、決断したりします。

これは自分に自信がなく、誰かの言う通りにしていれば失敗しないという思いからでもあるでしょう。

依存というのは、健康的な人もある程度持っている関係性です。全く依存がない人はいません。
しかし、その程度が強すぎたり、バランスが悪かったりすると不健康になってしまいます。

このような依存は、親子関係の繰り返しであると考えられます。
親の言う通りにしていればいい、と自分を失う生き方をしてきた結果として、いざ社会に出たときに自分ひとりでは生きられなくなってしまっているのです。

感情のコントロールが出来ない

機能不全家族の中では、感情を表現することが許されないことがあります。
自分の好きなものを好きと言えない、嫌なことを嫌と言えない……そうして自分の気持ちを押し殺しながら生活しています。

人の感情は、ある程度外に向けて発散しなければうまくバランスが保てません。

感情を抑え続けると、一見何も感じていないように見えてもそれはこころの中にたまっていきます。
しかし、こころのキャパシティは無限ではないので、いっぱいいっぱいになったものはいずれ入りきらずに爆発してしまうことになります。

感情が爆発してしまうと、周りにも大きな影響を与えます。
そうすると、同じことを起こしちゃいけないと思い、さらに強く抑えつけることになります。
強く抑えられるほど、その後の爆発も大きくなっていきます。

そうして繰り返しているうちに、自分ではコントロールが効かなくなってしまうのです。

機能不全家族で育った人へのカウンセリング

機能不全家族で育った人にとって、それまで自分が獲得してきた価値観を壊し、新しい価値観を作っていくことはとても重要です。

そのためには、カウンセリングも1つの手段となるかと思います。

カウンセリングでは、ご自身の小さいころからの人生を振り返っていく中で、その時の気持ちや感じていたことを整理していくことができます。
そうして今まで囚われていた価値観から距離を置けるようになっていくと、新しい価値観を自分の中に取り入れていくことが出来るようになります。

幼少期からの思い出を振り返ると、こころが動揺したり、辛い気持ちになることもあります。
それを1人で見つめなおすことはとても難しいことです。
そのため、カウンセラーと共に、その気持ちとも向き合いながら
過去を整理し、自分を苦しめる捉え方から抜け出してもらうことが出来ればと思います。

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