内観療法とは
内観療法は、日本で生まれた心理療法の一つで、
吉本伊信という浄土真宗の僧侶が、身調べという精神修養法を基に、
苦行性、秘密性、宗教性を取り除き、誰でも容易に実践できるように改良したものです。
1954年に少年院や刑務所に取り入れられ、1965年には心理学や医療の世界でも
取り入れられるようになりました。
内観療法には、研修施設などで1週間ほど用いて行われる集中内観と、
日常生活の中で継続して短時間の内観を行う日常内観がありますが、
集中内観を経験し、やり方や考え方などを理解した上で日常内観を
行うよう薦められています。
テーマに沿って自分と向き合う
内観法は、部屋の隅を屏風で仕切り、そこで自由な姿勢で座り、一日16時間、
トイレ、風呂、就寝以外は食事の時間も含め、全て屏風内で過ごし、
他人との雑談や新聞やテレビなどもない状態で過ごします。
1~2時間おきに内観法の指導者と数分の面接が行われ、そこで自身が思い返したこと、
気付いたことなどを話します。
屏風内で過ごす際、3項目の基本テーマと、クライエントの問題に応じたテーマが与えられ、
自身の幼少期から現在まで、自分と関係の深い人との関わりをテーマに沿って思い出していきます。
与えられる基本テーマは、
1・してもらったこと
2・して返したこと
3・迷惑をかけたこと
の3つです。
それぞれの項目に沿って思い出す中で、下記のようなことが起こるとされています。
してもらったこと:自分が受けた愛情体験を思い出し、
自己肯定感や他者を肯定的に受容でき、感謝する気持ちを持てるようになる。
して返したこと:自分が返すことができていることの少なさに気付き、
自分の未熟さを知り、償いの気持ちを感じる。
迷惑をかけたこと:他者に対して自分がかけた迷惑の多さに
罪悪感と自己否定の気持ちを感じるようになる。
さらに、迷惑をかけたことを思い出した際に感じる罪悪感は、
してもらったことを思い出した時の自己肯定感とのバランスにより、
申し訳ないという謝罪の気持ちとなります。
その感謝と謝罪の気持ちを持って内観を進めることにより、
より内観が深化し、効果を拡大していくのです。
内観療法の効果
上記のテーマに沿って考えていくことにより、それまでの自己や他者への認知、
特に、現在問題になっている事態や症状への認知が修正・改善され、症状が消失されたり、
行動が変化し、問題が解決することが多く、さらに、幼少期からの人生を順序立て、
整理してみていくことで、それまでの倫理観が変わったり、
新しい価値観を発見したりすることにもつながります。
そのため、内観療法では、対人関係や生活習慣、人生観の問題などによって生じる
ストレスが原因となる精神病や自己啓発などに効果が認められています。
内観療法の注意点
内観療法を行う際、下記の点については注意が必要です。
〇基本的に身近な人との関係から内観を行いますが、虐待などによりあまりにも
相手に対する負の感情が強い場合は、後に回すなどの工夫が必要です。
〇長時間をひたすら自己と向き合うことに費やすため、本人が自発的に、
せめて「やってみようかな」という程度には意欲があることが必要です。
〇統合失調症や境界性パーソナリティ障害などの方が行うことについては
専門家の中でも意見が分かれているため、注意が必要です。
〇重度の鬱病の場合、自殺願望を高める可能性があるため、寛解期に行うなど、
行うタイミングに注意が必要です。