森田療法とは
森田療法とは、1919年に日本の精神科医、森田正馬が提唱した精神療法の1つです。
主に神経症(現在の不安障害)の方へのアプローチ法として確立されたもので、
クライエントが不安に対して囚われ、苦しんでいることに焦点を当て、
そこから抜け出すことを目的としています。
森田療法の理論
森田療法では、自己の自然に起こる感情、感覚に対し、謝った認識をすることにより、
神経症に至ると考えます。
不安に感じてしまいやすい性格「ヒポコンドリー性基調」
生来の素質として、少しの心身の変化についても「病気ではないか」と
不安に感じてしまう傾向のことを、ヒポコンドリー性基調と呼びました。
どんどん悪い方に考えてしまう「精神交互作用」
私たちは、日常生活の中でも、何かしらの出来事により、心身に多少の変化を
感じることは多くありますが、少しくらい不安を感じても、気に留めずに生活をしています。
しかし、ヒポコンドリー性基調の方の場合、その少しの変調に注意を集中してしまいます。
そして、集中をしてしまったことにより、不安や恐怖などの感覚が強まり、
その強まる感覚によってさらに注意が集中してしまうという精神交互作用が生じ、
神経症が発症してしまうと森田は考えたのです。
さらに、同じようなことがまた起こるのではないかと想像し、
不安に感じ、集中してしまうことにより、悪循環が生じるとしました。
症状を取り除こうとする「思考の矛盾」
先ほどの悪循環の中で、クライエントは、不安や恐怖という感情により、
動悸や発汗、赤面などの症状が表れますが、
「他の人はこれくらい平気なのに、不安や恐怖を感じるのはおかしいことなんだ。」と、
自分の内面に起こる感情を押さえ込もうとします。
その不安や恐怖をあってはいけないという思想の元、その不安や恐怖を
感じないようにしようとはからうことで、一層不安や恐怖に注意が向いてしまい、
不安感や恐怖感はさらに増してしまうといった、先ほどとは別の悪循環にも陥るとしました。
上記の理論を基に、精神交互作用と思考の矛盾による二重三重の悪循環により、
神経症の症状が固定すると考えたのです。
森田療法の考え方
森田療法では、理論の中で紹介した悪循環を打ち破ることを目的としています。
そのため、原因追求や不安や恐怖のコントロールは行いません。
なぜなら、不安や恐怖に注目し、コントロールをしようとすることで、
感覚が一層鋭敏になり、悪循環に拍車をかけてしまうためです。
さらに、クライエントの訴える症状を直接取り上げることもせず、
不安や恐怖を“あるがまま”に受け入れ、出来ることを気分に関わらずにこなしていくことを促すことで、
不安や恐怖で何もできない状態から、不安や恐怖を抱えつつも必要な行動ができるようになり、
もともとの不安や恐怖にとらわれなくなると考えます。
森田療法とカウンセリング
森田療法の概要だけを見てみると、とりあえず行動をすればいいと考えてしまいそうですが、
実際には、カウンセラーや医師などによる面談を並行しながら行い、
内面の変化や捉えかたなどを確認しながら行います。
そのため、森田療法が確立された当初は、長期間の入院を必要としました。
しかし、現在では、外来療法、日記・通信療法、自助グループなどを
組み合わせて行う方法が考案されています。
また、近年、認知行動療法との共通点も指摘されており、世界的にも注目を浴びています。