来談者中心療法の概要

来談者中心療法は、ロジャース法、クライエント中心療法、パーソンセンタードアプローチ
とも呼ばれており、アメリカの心理療法家 カール・ロジャーズにより、1940年代に
提唱された手法です。

 

“生物はよりよく成長していこうとする、潜在的な力を持っている”という考えの下、クライ
エントが安心して自らの問題に取り組めるような場を提供することで、クライエントは自ら
成長していくと考えました。
そのため、当時、カウンセリングに訪れる方のことを、「患者」と呼んでいましたが、
ロジャーズは、“意思決定し、問題を解決していくのはその人自身である。”という信念のから、
「自分から援助を受ける人」という意味を持つ、「クライエント」という言葉を使用したのです。

そして、カウンセラーの仕事は、基本的な態度・姿勢を保つことで、クライエントが安心して
自らの問題に取り組めるような場を提供することであるとしました。
カウンセラーはあくまで補助者であり、問題を解決するのはクライエントでなくてはならす、
アドバイスや指示をするのではなく、簡単な受け答えや感情の反射などを通じてクライエント
自身が感情や行動について、洞察できるにすることが重要であるとしました。

来談者中心療法の理論

1957年に発表された論文、「治療的人格変化の必要十分条件」の中で語られたもので、
来談者中心療法の中核を担う理論について書かれています。
ここには、クライエントとカウンセラーの関係が6つの条件を満たしさえすれば、建設的な
人格変化に至る変化が起こると述べられています。

その6つとは、
1. 二人の人が心理的接触を持っている。
2. クライエントは不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安の状態にあること。
3. セラピスト(カウンセラー)は、その関係の中で一致しており、統合していること。
4. セラピストは、クライエントに対し、無条件の肯定的配慮を経験していること。
5. セラピストは、クライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、このことを
クライエントに伝えようと努めていること。
6. セラピストの共感的理解と、無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに
伝わっていること。

 

この6つの中でも、3番の一致、4番の無条件の肯定的配慮、5番の共感的理解が、
カウンセラーの態度条件であり、少なくとも日本においては、ほぼ全てのカウンセ
リングを学ぶ方が、カウンセラーとしての基本的姿勢として学ぶものです。

無条件の肯定的配慮とは、クライエントに対し、
「この条件でなら、あなたの存在を認めましょう」という態度を取らず、個人として、
これまでの経験や感情により培われたものを尊重し、たとえ矛盾や偏りのある価値観
であったとしても受け入れ、大切にしていこうとするものです。

 

共感的理解とは、クライエントの心の中の世界を隅々まで、あたかもクライエント本人
が感じているかのように正確に理解し、共有しようとする姿勢です。共感や感情移入
とも言われます。
ただし、感情的な同情や精神的癒着、同一化とは違い、カウンセラーとクライエント
の違いを認識していることが重要となります。

 

一致とは、自己一致・純粋性とも言われ、クライエントとの関わりを通してカウンセラー
が感じていることを正確に意識を出来ている状態のことです。
共感的理解としてクライエントの感情を深く理解しつつも、カウンセラー個人の感情や
状態もしっかりと理解し、把握できる状態と言えます。

来談者中心療法の現在

ロジャーズの提唱した理論は、その発表から現在まで、様々な技法や考え方に活用されて
います。
また、心理療法を治療のためのものとして捉えるのではなく、クライエントが主体的に
生きる為の援助とした点などは、様々な療法だけでなく、カウンセラーの重要な姿勢と
して今なお重要視されつづけており、根底を担うものとなっています。