遊戯療法の概要
遊戯療法は、プレイセラピーとも言われ、言葉での表現が十分ではない子どもとカウンセラーが、
遊びを通じて子どもの抱える問題の解決を図っていくものです。
遊びをコミュニケーション手段、表現手段として活用し、
子どもが言葉で表現できないものを遊びで補うことで子どもの心を理解し、心の安定を図るのです。
遊戯療法は、アンナ・フロイトとメラニー・クラインが子供に対し、
精神分析を応用したことから始まったものです。そのため、遊戯療法そのものには理論は存在せず、
精神分析療法や来談者中心療法などの理論を応用して行われており、非常に多様なものとなっています。
遊戯療法の8つの原則
遊戯療法には、8つの原則があります。
①カウンセラーは、子どもとの間に友好的な信頼関係を作る。
②カウンセラーは子どものあるがままを受け入れる。
③カウンセラーは子どもが自由に表現できるよう、許容的な空間を作る。
④カウンセラーは、子どもが表出している感情を察知し、
子どもが自分の行動を洞察できるように促す。
⑤子どもの自己治癒能力を信頼し、責任も持たせる。
⑥遊びは子どもが主体であり、カウンセラーはそれを尊重する(非指示的態度)
⑦治療は時間がかかるものであることを理解し、
子どものペースに合わせ、進行を焦らない。
⑧時間や場所を定めたり、子どもの攻撃や破壊などに対し必要な制限を与え、
現実の世界と関係づける。
特に、6番目の非支持的態度は非常に重要です。
「~しなさい」「今日は~しよう」などの指示や強要はせず、自由に遊ぶことを尊重することが
大切なのです。
しかし、子どもが不安を感じたり、罪悪感を感じるといったことを防ぐため、
最低限の制限を与えることで、子どもが安心して遊べる環境と、
コミュニケーションの中でのルールなど、対人関係の重要な要素を得られるようにすることも
必要となります。
そのため、カウンセラー(大人)は、年齢や体の大きさではなく、
精神的な大人の基盤を持ち、愛情ある目線で子どもと関わることが重要になります。
感情的に怒る・過度に干渉する・思うように行動をさせようとするなどの行為は、
子どもの安心感に影響を与え、十分に気持ちや感情などを表現することが
できなくなってしまいます。
大人が精神的基盤のある大人でいること、それにより子どもは安心感を持ち、
人との絆を持つことができるのです。
そして、カウンセラーは、そういった環境を維持しつつ、
子どもと遊び、その様子やその背景にある感情に十分に気を払うことが求められます。
遊戯療法の効果
遊びというコミュニケーションを通じ、自由にこころを表現することで、
子どものストレスに凝り固まった心を開放させ、本来の心を取り戻すことを目指します。
また、その過程において、カウンセラーも、子どもの心の状態を理解し、
心の病気の発見や治療、本来の自己を見つける手助け、精神的成長などを促すことに
役立てることができます。
このようなことから、遊戯療法は、
子どもの神経症や自閉症、吃音症、発達障害、精神遅滞などに効果を発揮しています。
ただ、遊戯療法を実施するには、その為の遊戯室の確保などが必要になるため、
本格的に実施できる施設は、病院、児童養護施設、自治体の教育相談施設など、
子どもをカウンセリングする機関が大半です。
民間のカウンセリングルームでは、箱庭療法などの一部療法を行っているところは多いようですが、
遊戯療法そのものを実施している所は少ないのが実情のようです。