行動療法の概要

1950年代末から、スキナー、ウォルピ、アイゼンクなどにより、心理的な問題に対する
新しい介入法として体系化されたもので、1959年、アイゼンクにより、行動療法とは
どういったものかと定義づけされました。

行動療法は、「問題を維持・悪化させてしまう状態になった理由は、不適切な学習による
ものである。」という学習理論を基礎とした行動変容のための様々な技法の総称といえます。
このため、行動療法は、他の療法とは違い心よりも測定が可能な行動に着目し、その行動
が変われば、問題状況が改善され、結果、精神状態も安定するというアプローチを取ります。

 

行動と学習:行動療法の捉え方

行動療法では、学習を経験による行動の永続的な変化と考えます。
また、行動とは、目に見える行動だけでなく周囲の環境や状況によって起きる反応も含めて
おり、思考や感情なども環境や状況によって発生したものであれば、行動として考えます。

スキナーは、行動を分類し、熱いものに手が触れてしまった時、思わず手を引っ込めて
しまうような、刺激によって行動が引き起こされるものと、部屋を涼しくするために窓を
開けるなどといった、自発的な行動の2種類に分けました。

そして、刺激によって引き起こされる行動をレスポンスド行動、自発的な行動をオペラント
行動と名付けました。
これらは、古典的条件付けと、オペラント条件付けの2種類の学習により起こるとされ、
行動療法が成立した時は、この2つの条件付けを学習理論と呼び、行動療法の骨子となって
いました。
現在では、この二つの他にモデリング(観察学習)も行動療法での重要な学習理論の一つ
として加えられています。

 

苦しみは学びによって生まれている:学習理論

行動療法は、問題行動や、環境や周囲の状況に適応できない行動をとってしまうことも学習に
よって引き起こされており、治療も学習によって行うことができると考えており、どのように
して学習されてしまったのか、どのようにして学習するのかを、学習理論として説明をして
います。

 

古典的条件付け
古典的条件付けは、パブロフによって発見されたもので、パブロフの犬という名称で有名
です。
これは、餌を待つ犬に、ベルの音を聞かせた後で餌を与えるということを繰り返すと、
始めはベルの音を聞いてもよだれが出るなどの反応がなかったものが、ベルの音を聞くだけ
でよだれを出すようになるというものです。
これは、ベルの音が鳴ると餌が出てくるという条件を学んだ結果、よだれが出てくると学習
したと言えます。
また、ベルの音でよだれが出るようになった犬に、ベルの音を聞かせるだけで餌を与えない
ことを繰り返すと、次第によだれは出なくなっていくことも判明しています。

オペラント条件付け
オペラント条件づけとは、自発的な行動による周囲や環境の変化のし方に合わせて、自発的
な行動の頻度が変化することを言います。
掃除をして褒められたり、喜ばれたりすると、掃除をする頻度は増えますが、文句を言われ
たり怒られたりすると、掃除をする頻度は減ってしまいます。
問題行動も、その行動によって不安や恐怖が回避されたり、もしくは何かしらの満足が得ら
れるという報酬があるため、繰り返されているとかんがえられるのです。

観察学習(モデリング)
観察学習とは、直接経験したり、何かしらの報酬が得られなくとも、他の人の行動を観察
することにより、学習されることです。

 

 

行動療法とカウンセリング

現在、行動療法は、認知療法との融合が進み、認知行動療法として広く知られています。
以前は、クライアントの心の部分を無視しているなどの批判もありましたが、今ではカウン
セラーとクライアントの関係性も重視され、行動療法の認知的側面が強調れています。
行動療法は、様々な技法があるため、行動療法とひとくくりに考えて心の病に当てはめる
ことが困難です。

例えば、不安障害やPTSDのような神経症には、暴露療法やモデリング療法が
有効とされていますし、統合失調症には報酬学習や刺激統制法が有効とされています。
このように、病や問題に合わせた方法が多くあるため、子どもから大人まで対応できる
幅広さがあります。
しかし、考え方や価値観などの悩みに対してアプローチが難しく、対処療法になってしまい
がちという短所があります。