認知療法の概要
認知療法とは、1970年代にアーロン・ベックにより提唱された療法です。
「人間の気分はその人が状況をどう認知するかによって変化する」という仮説から生まれた
もので、これをABC理論と言います。
認知(物事の捉え方・考え方)の在り方を患者と共に検討したり検証したりすることで、
その状況に適さない行動を修正したり、問題解決を行うことで気分を改善させることを目的
としています。
ABC理論とは
何か出来事があった時、人はその出来事について何かしらイメージが浮かんだり、考えたり、
信念などに基づいた捉え方をしたりします。そのイメージや考え、信念などにより、感情や
行動が導き出される。といったものです。
人の物事の捉え方:2種類の認知
認知療法では、人の認知を、表層にある「自動思考」と深層にある「スキーマ」の2種類が
あると仮定しています。
自動思考とは、何かがあった時に自動的に浮かぶ思考やイメージのことで、深く考えなくても、
自動的に浮かんでくるものです。そのため、普段は認識していないことも多くあります。
スキーマ(中核信念)とは、「自分や世界をどうとらえているか」など、その人の信念や知識
など、中核的なものを指します。
自動思考は、状況などに応じて様々な形で湧き出てくるのに対し、スキーマは、その自動思考
を生みだす際の判断基準のような役割を果たしています。
抑うつなどに繋がる捉え方:認知のゆがみ
抑うつ状態や不安状態などに陥っている時、もしくはこれまでの経験などから、自動思考は
ゆがめられ、不合理であったり、論理的におかしなものになってしまうことがあります。
この論理的な誤りを認知のゆがみと言い、これを見つけ、検証し、適切なものへと置き換える
ことが認知療法の中心的考え方になります。
そんな中で、典型的な例として挙げられているものが、「認知のゆがみ」として広く知られて
いるものになります。
認知療法のカウンセリングでの活用
不安や悲しみ、怒りなどといったネガティブな感情を感じてしまうようなものの受け止め方、
認知を修正することを目的としているため、認知療法を通じ、クライアントは不安やストレス
を軽減させることができます。そのため、不安やストレスを原因とする、社会恐怖症、PTSD、
パニック障害などの神経症や、過食症、依存症の治療に有効とされています。
しかしながら、現在、認知療法だけでカウンセリングが行われることは少なく、クライエントへ
の治療効果を高めるため、行動療法の手法が取り入れられ、認知行動療法として活用されています。