「愛されている」と感じられない不安へ。承認欲求の沼から抜け出すために。

「私、愛されているのかな?」

何度も相手に愛情を確かめるような行動をしてしまう。
あるいは、嫌われるのが怖くて、自分の意見を押し殺し、常に相手の期待に応えようとしてしまう。
そんな心の疲れを感じていませんか?

もしあなたが、
「相手から求められなくなったらどうしよう」
「急に不機嫌になって相手が機嫌を取ってくるのを期待している…」
など、不安と自己嫌悪に陥っているなら、まずはなぜそう思うのかを感じてみてください。
あなたの言動は、単なる性格の問題ではなく心の奥底にある「見捨てられ不安」や「不安定な愛着」という根深い問題から生じているサインかもしれません。

◆心に根付く二つの心理的課題

・見捨てられ不安

これは、「自分は最終的に誰からも見捨てられてしまうのではないか」という強い恐れです。
特に幼少期に、親や重要な養育者との関係で、満たされない経験や一貫性のない関わり方をされた場合に形成されやすいと言われます。
この不安が強いと、無意識のうちに相手の愛情を試すような行動(試し行為、確認行為)に出てしまいます。

  • 相手をわざと遠ざけて、追ってくるか試す。
  • 過度に相手の行動を制限したり、詮索したりする。
  • 些細なことで「もう終わりだ」と関係を断ち切ろうとする。

これは、「見捨てられる前に、自分で関係を終わらせてしまおう」という自己防衛であり、相手に愛を求めているのに、自ら関係を壊してしまう矛盾した行動となって現れます。

・不安定な愛着スタイル

私たちの対人関係のパターンは、幼少期の養育者との関わり方によって「愛着スタイル」として形作られます。
承認欲求のコントロールが難しい方の多くは、「不安型」または「恐れ・回避型」といった不安定な愛着スタイルを持っていることが指摘されています。

不安型: 愛情に飢えており、常に相手からの愛情表現を求めます。
相手の気持ちを疑いやすく、過剰に接近したり、依存したりする傾向があります。
「愛されている」という実感が持てないと不安になるのは、この不安定な愛着が深く関わっています。
心の土台が揺らいでいるため、一時的に愛情を感じてもすぐに不安に逆戻りしてしまうのです。

◆苦しさへの対処法3つ

コントロールから「安定」へ承認欲求や愛情の不安は、一時的なテクニックで「コントロール」できるものではありません。
必要なのは、心の土台から「安定させる」プロセスです。

(1) 自分の感情を「言語化」して「観察」する

不安が押し寄せたとき、すぐに確認行為に走るのではなく、一度立ち止まる練習をします。
「今、私はなぜこんなに不安なんだろう?」
「相手に何を言ってほしいんだろう?(『好き』?『ずっと一緒』?)」
「この不安の大きさは10段階でどれくらいだろう?」

自分の感情に名前をつけ、客観的に観察することで、衝動的な行動との間にわずかな「間(ま)」を作ることができます。
この「間」こそが、心のコントロールを取り戻すための第一歩です。

(2) 満たすべき欲求の「対象」を変える

私たちは皆、承認欲求を持っています。
大切なのは、その欲求を「他人」からではなく、「自分自身」から満たす習慣を築くことです。

他人軸: 「相手に評価されるから、自分には価値がある」
自分軸: 「(何もしていなくても)自分には価値がある」

自分軸を築くために、「自分で自分を褒める」「自分の成功や努力を自分で認める」といった内省的な習慣を意識的に取り入れてみてください。
他者の評価を気にする時間を、自己肯定感を育む時間に充てることが大切です。

(3) 関係の「質」を大切にする

愛情の不安が強い人は、しばしば「量(回数や時間)」で愛を測ろうとします。
しかし、関係の本当の安定は「質」にあります。

・信頼できる友人や専門家と、自分の感情を正直に語り合える機会を持つ。
・自分の意見を言ったときに、受け止めてくれる安心できる人間関係を築く。

「この人は私を受け入れてくれる」という経験の積み重ねが、見捨てられ不安を和らげ、徐々に心の安定へと繋がります。

◆カウンセリングがあなたの力になれる理由3つ

ブログで紹介した対処法を「頭では理解できるけど、一人では実行できない」と感じるかもしれません。
それは当然のことです。

長年かけて形成された「愛着のパターン」を一人で変えるのは非常に困難だからです。
カウンセリングは、この根深い問題に安全な環境で向き合い、変えていくための最良の手段です。

(1) 「安全基地」の再構築

カウンセラーとの関係は、安心できる「安全基地」を体験する場となります。
ここで、あなたは「無条件に受け入れられる」という体験を積み重ね、「自分のありのままの姿でも愛される(受け入れられる)」という感覚を育てます。

(2) 愛着スタイルの理解と修正

カウンセリングでは、あなたの愛着スタイルがどのように形成されたかを理解し、現在の人間関係でどのようなパターンを繰り返しているかを客観視します。
その上で、不安定な愛着を「安定型」へと近づけるための具体的な行動や考え方を一緒に練習していきます。

(3) 感情の表現と境界線の確立

「相手に合わせすぎる」のは、自分の感情を抑圧している状態です。
カウンセリングは、抑圧された「本当は嫌だった」「本当はこうしてほしかった」という感情を安全に表現する練習の場です。
同時に、「ここまでなら大丈夫」という健全な境界線を他者との間に築く練習もサポートします。

◆おわりに

愛される努力よりも、「安心して愛される私」へ愛されている実感が持てないとき、私たちは必死に愛されるための努力をしてしまいます。
しかし、本当に必要なのは、愛されるための努力をやめ、安心して愛を受け取れる自分になることです。

「誰かに合わせるのが疲れた」
「もう愛されているか試すのは終わりにしたい」

もしそう感じたなら、それは心の成長を始める準備ができたサインです。
相手へ向けていた優しさを、まず自分自身に向けてみませんか?