精神分析の概要

1900年代、ジークムント・フロイトにより、創始された学問です。
19世紀後半、シャルコーの元で催眠を通じたヒステリーの研究に始まり、様々な治療経験
の中で、1900年頃に自由連想法を発見するに至りました。
この自由連想法は、患者自身が自ら抑圧している欲望や感情を自由に語り、自己分析をする
ことを分析家が手助けするというものです。
フロイトは、後日、この自由連想法を精神分析と名付けており、精神分析療法の基礎となる
ものとなっています。

精神分析療法は、今日の心理学においても多大な影響を与えており、ユング派の分析心理学、
アドラー派の個人心理学、エリック・バーンの交流分析、フリッツ・パールズのゲシュタルト
療法など、様々な理論の発展の礎となりました。

フロイトと性・汎性欲説

フロイトの研究の中でよく批判される点として、性の問題があります。
「心の病は、無意識下における性的欲求や性的経験が抑圧されることにより起こる」という
もので、「フロイトは、なんでも無理やり性的欲望につなげている」という批判をされたり
しています。
しかし、この性的欲求は、生殖的な欲求だけではなく、身体的快楽、精神的愛情、自我など
が持つ欲望など、人間の広範囲の欲望を指していました。
そして、それら欲望や道徳心との間に生まれる葛藤などに注目し、人間の本質を探ろうとし、
そのカギを握るものとして、性の欲望に着目をしていたのです。

無意識の発見・局所論

精神分析の基礎である自由連想法を知る上で、意識と無意識について知る必要があります。
フロイトは、無意識の発見者と言われています。
それまでの無意識とは、「心の中でも、意識されていない領域」 という捉え方でしか
なかったのですが、フロイトは、無意識を「抑圧された欲望」と、定義しました。

さらに、無意識と意識の境界に前意識という領域、普段は思い出せないけれど、何かの
きっかけで意識に再びもどってくるものがある領域を定義しています。
そして、意識に浮かび上がらない無意識の領域にあるものについては、意識の領域に抑圧
され、うっかりしたミスや失敗、夢、心の病として表出することから、無意識を認識する
ことができると考えました。
この考え方を局所論と言いますが、後に修正され、構造論へと発展しました。

自由連想法では、自由に患者が語る中で、出てくる言葉などから無意識下にある抑圧を
探すことで、自分でも気づかないで抑圧している物事を探って行こうとするものなのです。

心を装置として考える構造論

構造論とは、心が「自我」、「イド(エス)」、「超自我」という3つの層により形成
されるという理論です。

・イド (エス )
「〜したい」という欲望を表します。フロイトは、欲望はもともと本能的な性の欲求で
あると捉え、その源となるのがイド(エス)であると唱えました。
イド(エス)は、非現実的な考えや衝動的な行動を引き起こすこともあります。
このような欲動を「リビドー」と言い、様々なものに対する愛着や欲望といった性欲動
のエネルギーを意味します。このイドは、無意識的であり、リビドーを満たそうとする
「快楽原則」に則っていることが特徴です。

・超自我
イド(エス)とは反対の、良心や道徳的価値観を指し、「こうあるべき」「~しては
いけない」と、イド(エス)を抑圧する働きをします。
ほとんどが無意識的にはたらき、罪悪感や後悔といった感情を引き起こしたり、社会規範
を守り、社会生活を送るうえで重要な役割を担っています。

・自我
イド(エス)と超自我の仲裁をする機能を果たします。「〜したい」というイド(エス)
と「〜してはいけない」という超自我がぶつかると人の心の中に葛藤が起きます。
これを自我が現実的な考え方、対処方法へと調整していく働きをします。
これは、自我は、生まれた時からあるものではなく、母親や周囲の人との関わりの中で、
エスの赴くままでは社会生活が成り立たないことから、自我を作り、社会生活に適応
させていくのです。
また、その社会生活において、自分にとって不都合であったり、脅威になるもの、認め
たくないことなどをエスへと追いやる働きがあり、これを防衛機制といいます。

自我を守る為の自我防衛機制

人が生活をしていく上で、様々なことがおこり、心が傷ついたりすることがあります。
その際、自我を守る為、自我防衛機制というモノが働き、自我への負担が軽くなるよう
にするための機能が働きます。
この機能には、抑圧・昇華・投影・同一化など、様々な種類があり、その時々によって
使い分けたり、人によってどの方法を取りやすいかなどの特徴があったりします。

精神分析のカウンセリングでの活用

精神分析は、従来、自由連想法を用いてカウンセリングを行っていました。
この方法は、患者の思いつくままに話すため、週に何度も面談を行う上に。1回の面談
時間も長くかかってしまうため、現在では、カウンセラーとクライアントが対面に座り、
テーマに沿って面談を行うことで、双方でのやり取りの中で自己分析を深めていく方法
が取られています。

そのため、週1回の頻度で行うなど、より実際的な方法で行われるようになっています。
この方法は、精神分析的療法、精神分析的カウンセリングと呼ばれています。
どちらの方法であっても、クライアントの無意識の領域を探り、自己理解を深めつつ、
過去の傷(トラウマ)を見つけ出すことを目的としており、その過去の傷を知ることで、
対策を練ることができるというスタンスでカウンセリングが進んでいきます。

そのため、精神分析や精神分析的カウンセリングでは、トラウマが元となる社会恐怖症、
外傷後ストレス障害、強迫性障害、恐慌性障害などのといった神経症に効果があると
されています。