近年、発達障害という言葉自体は以前よりもよく聞くようになりました。
合理的配慮の重要性も指摘されるようになり、段々と障害を持つ方々にとっても生活しやすい社会になってきているのではないかと思います。
一方で発達障害という言葉だけが独り歩きしてしまい、実際に発達障害という障害がどういうものなのかをしっかりとは知らない方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな発達障害について、簡単に触れていきたいと思います。

発達障害とは

発達障害とは生まれもった脳機能の発達の偏りによって、幼児のうちから行動や人との関わり方などに特徴のある状態です。
得意・不得意が大きいことや、周りの人・環境にうまく合わせていくことが難しいことから社会の中で生きづらさを感じることが多くなります。
外見からは分かりにくく、同じ「発達障害」であってもその症状や困りごとは1人1人異なっています。

また、混同されやすいのですが「知的障害」とは異なる概念です。
知的障害と発達障害が併存している方もいらっしゃいますが、発達障害を持っている=知的障害がある、ではありません。

また、「精神障害」とは基本的にこれら全てを含む広い概念になっています。
しかしながら日本においては精神疾患を狭い意味での精神障害と表記することもあるようです。

発達障害の中には
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠如・多動症(ADHD)
・学習障害(LD)
・チック症
などが含まれています。

これらは生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しており、同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害を併せ持ったりすることもあります。

発達障害による特徴を本人の性格の問題や努力不足などと捉えられ批判されることも未だ少なくありませんが、これらの特徴は本人の努力や親の育て方ではなく、脳の働き方によるものです。

先天的な脳機能の障害であり、病気ではないため「治る」ことはありません。
しかしながら、本人や家族・周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、得意な部分を活かしやすくなったり、生活の中の困難さを軽減させたりすることができます。

それぞれの特徴について

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、2013年から使われている診断名となります。
それ以前は、自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害などと称されていたものが統合されてできた診断名となります。

主な特徴としては以下のようなものが挙げられています。

①社会的コミュニケーションや対人関係の困難さ
・他人に対して無関心であり、関係を築こうとしない
・コミュニケーションの方法が独特である
・言葉や視線、表情、身振りなどを用いた自然なやりとりが苦手
・自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手
・その場の雰囲気を察することが難しい、空気が読めない

②限定された行動、興味、反復行動
・特定のことに強い関心をもっている
・こだわりが強い
・同じことを何度も繰り返している

また、感覚に関する過敏さ・鈍感さを伴っていることもあります。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

不注意(集中力がない・ケアレスミスが多い)
多動性(じっとしていられない・そわそわと手や足を動かしてしまう)
衝動性(思いつくと行動してしまう・失言が多い)といった症状が見られる障害です。

これらの要素は「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」というように、人によって現れ方が異なります。

「大人のADHD」という言葉が昨今よく聞かれますが、これは「大人になってからADHDを発症した」ということではありません。
最初にも述べましたが発達障害は脳機能の障害であり、その特性自体は小さいころからあったものと考えられます。
もともと特性はあったものの問題になっていなかったものが大人になり複雑化した人間関係や社会生活の中で表面化してきた、ということになります。

学習障害(LD)

全般的な知的発達には問題がないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の学習にのみ
困難が生じる障害のことです。
困難さを感じる特徴によって「読字障害」「書字障害」「算数障害」に分かれています。

知的な発達に問題がないため、本人の努力不足として扱われやすく気づかれにくいことも多い障害となっています。

チック症

チックとは、思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声のことです。
運動チック(まばたき・首振りなど)や音声チック(咳払い・ンンン、という声など)が一時的に現れることは多くの子どもにあることで、そっと経過をみておいてよいものとされています。
多くの方で1年以内に症状が消失し、慢性化した場合は思春期に症状が最も強くなりますが、成人になるにつれ大部分の方で改善あるいは消失すると言われています。

症状が1年以内に消失するものを一過性チック、運動チック・音声チックのいずれかが1年以上続くものを慢性チック、両者が1年以上続くものをトゥレット症候群と言います。

症状が強く、日常生活に支障をきたす場合は薬物療法がおこなわれることもあります。
また、ADHDや強迫性障害と合併して症状が出ることが知られており、これらに対する対応も必要となります。

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