ゲシュタルト療法の概要

ユダヤ人の精神科医、フレデリック・パールズ(フリッツ・パールズ)とその妻のローラにより、
ゲシュタルト心理学、実存主義思想などを手がかりにはじめられたものです。

ゲシュタルトとは、ドイツ語で形・形状・全体性といった意味を持つ言葉です。

ゲシュタルト療法では、「人の心は、必ずしも部分の総体ではない。」と考え、
過去の経験などがどのように影響をして今に至るかよりも、
今、ここで何を感じ、どう思っているのかを重視します。
そして、それを的確に行うためにも、自分の感情、身体の状態、環境などを全体的に見ることで、
自分が気付けていなかった新たな認識や思いを冷静に観察し、受け止め、
自分の気付いていない問題を解決していこうとします。

今、ここ

ゲシュタルト療法の特徴の一つとして、過去の経験などをたいして重視しない点にありあす。
その理由として、今の自分は、過去の産物ではなく、過去の行為などを行った自分に対し、
どういうゲシュタルトを作っているのかによって、今の自分が形作られている
と考えるためです。
そのため、問題に悩むクライエントの行動についても、その行動を過去から解釈するよりも
自分がその行動によって何をしているのかに気付き、
行動を変えることを大切にしている
のです。

気付きの3つの領域

ゲシュタルト療法では、気付きを非常に大切にしています。
気付くということで、自分は感じられる・動くことができる・考えることができるという自覚をもち、
今、このタイミングで感じている様々なことを感じ、気付いていくことで、
人格の統合性、全体性の回復をめざしていく
のです。

通常、人は、無自覚・無意識の内に

自分の体外の環境(外部領域)
自分の体内の感覚(内部領域)
思考や空想の領域(中間領域)

と言われる3つの領域に対し、注意をさまよわせている状態にあります。
まんべんなく注意をさまよわせ、それぞれに気付くことができればいいのですが、
例えば非常に集中している時は、室温や時間、音などに気付きにくくなるなど、
注意が手薄になってしまいます。

これにより、自分の認識と現実に乖離がおきたりするのです。

この乖離を自分というものの統合が失われている状態だと考えます。
そのため、3つの領域への注意をバランスよく向け、全体を見たりすることで
それぞれの領域で感じられることに気付き、考えることを通じ、
現実と自分の認識との差などが縮まり、統合されるようになっていくのです。

ゲシュタルト療法とカウンセリング

ゲシュタルト療法は、エンプティチェアなど、独特の技法が多くあります。
そのため、技法を使うタイミングや使い方を知らずに模倣してしまい、
効果が得られなかったり、クライエントに不快な思いをさせてしまう
カウンセラーも多いようです。

このことから、カウンセラーには、技法に囚われることなく、
理論や効果、意味などを深く理解し、的確な手法を選択できる
力量を得る為の経験が必要になってきます。